研究実績の概要 |
一般に、動物の様々な組織のサイズ、重量は一定の比になるように発生し、それが維持される。この機構は動物の生存と活動のために極めて重要であるが、その分子機構はほとんどわかっていない。私たちはゲノム編集で作製されたHox13変異体イモリで尾長が著しく増加することを発見した。このような器官サイズ比に異常をきたす変異体はほとんど見つかっておらず、その解析は上記の分子機構の理解に役立つ。 最終年度の最も大きな成果はゲノム編集で得られたHox13変異体の尾長伸長異常がオフターゲット等によるのではなく、真にHox13遺伝子群の変異によることを証明したことである。これまで3年以上をかけてゲノム編集で得られたHox13遺伝子群の変異体から交配により生殖系系列変異体系統を作製した。そして、Hoxa13, c13, d13三重変異体で尾長伸長異常が起こることを確認した。また、これら遺伝子および中胚葉前駆細胞や神経前駆細胞のマーカー遺伝子が野生型成体の尾端で発現していることを確認した。 研究実施期間全体を通じて以下の結果を得た。 (1) ゲノム編集で認めれられたHox13変異体の尾長伸長異常がHox13遺伝子の変異によることを生殖系列変異体の作製により確認した。(2) 上記異常は尾椎数の異常増加による。(3) (2)の異常は発生終了後に開始する。(4)野生型成体の尾端で Hoxa13, c13, d13および中胚葉前駆細胞や神経前駆細胞のマーカー遺伝子が発現している。これらの成果からHox13がこれらの細胞の動態を制御し、尾長比を調節していることが示唆された。
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