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2022 年度 実施状況報告書

血流遮断による白髪化機構の解明と新規予防・治療法の検討

研究課題

研究課題/領域番号 20K06657
研究機関島根大学

研究代表者

松崎 貴  島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (90241249)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード白髪化 / 色素幹細胞 / 血流 / 低酸素 / 老化
研究実績の概要

毛周期が成長期にあるマウスの皮膚を両側からシリコーンシートと半円形ネオジウム磁石で圧迫すると白髪化するが、これが皮膚の低酸素化によるものかどうか検討した。真空ポンプで脱気して酸素濃度を低下させた医用ゲル、または脱気後に酸素ガスを導入したゲルを用意し、これを成長期誘導したマウスの皮膚に塗布してラップで覆って磁石で迫してみたところ、低酸素濃度でも高酸素濃度でも白髪化率に有意差はみられなかった。酸素濃度の効果をさらに検討するため、成長期を誘導したマウス背部皮膚を採取して0.44mmのスライス片を作成し、器官培養行った。培地の酸素濃度を低下させるため、培養プレートを脱酸素剤とともにガスバリア性パウチに入れ、酸素濃度計で計測しながら適当な酸素濃度で脱酸素剤を除いてCO2インキュベータ内で培養した。酸素濃度を2%から18%まで変化させた結果、18%では毛が伸長するものの1週間以内に組織が崩壊し始めたのに対し、2%では毛の伸長は止まるものの組織は崩壊せず維持された。2%で1日間培養した後に60%まで酸素濃度を上げることで毛の伸長が回復したが、低酸素条件に曝さなかった皮膚片に比べると毛の伸長は悪かった。しかし、2%から6%の低酸素条件に1から3日間曝したいずれの皮膚片でも、毛包の発達段階に応じたレベルのメラニン合成が観察され、in vivo実験のような白髪化は再現できなかった。白髪化した毛包にも色素幹細胞が残っていることがDct免疫組織染色等で確認されたので、残存する幹細胞を再活性化させるために2-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)による刺激を行ってみたが、黒毛化させることはできなかった。遺伝子発現解析からはエピジェネティックな変化が起こっている可能性が考えられたので、今後はこの点に留意しながら皮膚圧迫により白髪化する仕組みについて調べる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究計画では、1)白髪化が起こる毛周期ステージや血流停止時間を明らかにする、2)白髪化が起った場所と起こらなかった場所の血流の違いを調べる、3) 血流遮断による白髪化の標的細胞を明らかにする、4)標的細胞への影響が活性酸素あるいは一酸化窒素によるかどうかを明らかにする、5)酸素ストレスを低減することで白髪化が予防できるか検証する、の5段階で白髪化メカニズムの解明を想定していた。このうち、すでに1)2)は一昨年までに確認できたが、血流遮断の効果が血流の有無あるいは強弱によるものでも、活性酸素あるいは一酸化窒素の直接的効果によるものでも無いことがわかり、その後の解析を難しくしている。当初の想定とは別のメカニズムを考える必要がでてきたことから、昨年度は低酸素の影響を調べたが、主因とはなっていないことがわかった。主因が掴めていないことから研究が遅延していると判断し、研究期間を延長して解明に取り組みたい。

今後の研究の推進方策

皮膚圧迫時のエピジェネティックな変化の影響を明らかにするため、メチル化を抑止する実験およびヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬を用いた実験を行うとともに、白髪化を誘導した皮膚と比較する。また、背部毛包の器官培養系を用いて、これらの薬剤投与後の経時的な遺伝子およびタンパク質レベルの変化を追跡する。さらに、白髪化に関与すると言われているcAMP等の効果について比較検討することで、老化にともなう白髪化のメカニズムの解明につなげたい。

次年度使用額が生じた理由

研究が遅延したため、物品費の残額が24,397円あるが、次年度の消耗品購入に充てる。

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公開日: 2023-12-25  

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