研究実績の概要 |
本研究で注目する主要なタンパク質の一つであるZO-1はタイトジャンクションに局在する細胞質タンパク質である。我々は、ZO-1が力学刺激におけるリン酸化の標的であること、また、その局在が液液相分離(LLPS)により制御されていることを報告した(Hashimoto, Kinoshita et al., Cell Systems 2019, Kinoshita et al., Cell Reports 2020)。マウスの3.5日胚(E3.5)は子宮に送られ、子宮上皮と相互作用しながら着床過程を進行させる。E3.5からE4.5にかけての栄養外胚葉において、タンパク質ZO-1の局在が、力学刺激によりダイナミックに制御されていることを報告した(Kinoshita et al., iScience 2022)。マウス胚の着床過程では、この栄養外胚葉が子宮内膜上皮と接触することにより上皮間葉転換を起こす。また、子宮内膜上皮は形態変化をおこして胚を包み込む。このようなダイナミックな変化は胚と子宮上皮組織、あるいは子宮上皮組織同士の接触による制御が重要であると考えられる。そこで我々は、これらの組織同士の接触によるシグナル伝達のしくみを解明するため、胚と上皮組織の表層に局在するタンパク質の質量分析による同定を進めた。その結果、組織同士の力学刺激における膜貫通受容体型プロテインキナーゼを同定した。さらにその下流には別のプロテインキナーゼが活性化することを見出し、子宮内での着床過程において、接触刺激によるプロテインキナーゼ・カスケードの活性化が確認できつつある。現在、このプロテインキナーゼの活性化メカニズムを解析中である。
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