研究課題
神経幹細胞の細胞分化過程で、分化運命決定を制御する遺伝子群が振動発現などのダイナミックな発現動態を示すことが明らかになってきており、それらが細胞分化の正確さやタイミングを制御する重要な役割を担っていることが示唆されている。しかしながら、個々の遺伝子が示すダイナミックな発現変動の機能的意義は未だ不明である。本研究課題では、我々が開発した光作動性Tetシステムを用いて、培養神経幹細胞において、分化運命決定因子であるbHLH 型転写因子のダイナミックな発現を人工的に光制御し、神経幹細胞の増殖およびニューロン分化過程におけるbHLH 型転写因子のターゲット因子の探索、および、その機能解析を予定している。本年度は、青色光作動性Tetシステムの改良や、この遺伝子発現システムを導入した神経幹細胞のクローン化を進展させた。この結果、bHLH 型転写因子の遺伝子発現制御をより厳密に実施することが可能になり、異なる光照射条件を用いることによって、細胞増殖やニューロン分化を制御することに成功した。次に、bHLH 型転写因子の遺伝子発現を光操作した神経幹細胞を、細胞増殖やニューロン分化過程の様々なタイミングでサンプリングをして、RNAシークエンス解析を実施した。さらに、複数の分化運命決定因子の発現を同時に制御するために、多色光による遺伝子発現制御システムの開発にも着手した。今後は、RNAシークエンス解析から得られたbHLH型転写因子のターゲット因子の発現動態の解析や機能解析を実施し、神経幹細胞の増殖や分化制御についての解析を継続する。
1: 当初の計画以上に進展している
光作動性Tetシステムの改良に成功し、bHLH型転写因子の遺伝子発現の光操作がこれまでよりも厳密に実施できるようになった。そのため、光操作した神経幹細胞のRNAシークエンス解析について当初の予定よりも進展が見られた。また、他の光操作システムの開発にも成功し、原著論文発表や総説論文発表、学会発表を行なった。
これまでの研究において、神経幹細胞の細胞分化過程で、分化運命決定を制御するbHLH型転写因子が示す振動発現などのダイナミックな発現動態に着目し、それらが細胞分化の正確さやタイミングを制御する重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本年度は、遺伝子発現の光操作システムの改良に成功し、bHLH型転写因子のダイナミックな発現変動を人工的に制御した細胞を用いて、RNAシークエンス解析を実施した。今後は、bHLH型転写因子のターゲット因子の探索を行う。bHLH型転写因子などのproneural遺伝子やホメオボックス転写因子、エピゲノム制御因子、各種の細胞シグナル因子に着目して探索を行う。さらに、それらのターゲット因子の遺伝子発現動態について、ライブイメージング技術を用いて可視化する。bHLH型転写因子とそのターゲット因子等の複数の因子の遺伝子発現を同時に制御するために、多色光を用いて体系的に光操作し、これらの因子がどのように協調的に機能して、ニューロン分化のタイミングを制御しているのかを解析する。さらに、脳組織中においてもニューロン分化運命決定因子群の発現の光照射を試みる。これらの解析は、ヒトの神経変性疾患・神経障害の治療や、再生医学に適応するための新規戦略の開発に繋がると期待される。
学会発表がweb会議に変更になり、予定していた旅費が不要になったため、残金が発生した。次年度で予定している遺伝子発現解析実験に使用する予定である。
すべて 2020 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://researchmap.jp/myamada