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2021 年度 実施状況報告書

新規光操作システムを用いた、神経幹細胞の分化制御メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K06667
研究機関京都大学

研究代表者

山田 真弓  京都大学, 生命科学研究科, 講師 (50583457)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード神経幹細胞 / ニューロン分化 / 光遺伝学 / 転写因子 / 細胞分化 / Tetシステム / 神経発生 / RNAシークエンス
研究実績の概要

中枢神経系の発生過程において、多分化能を持つ神経幹細胞からニューロンやグリア細胞が順次生み出され、複雑な脳組織が構築されていく。このような神経幹細胞の細胞増殖・分化過程で、分化運命決定を制御する遺伝子群が振動発現などのダイナミックな発現動態を示すことが明らかになってきており、それらが細胞増殖や分化の正確さやタイミングを制御する重要な役割を担っていることが示唆されている。しかしながら、個々の遺伝子が示すダイナミックな発現変動パターンやその機能的意義は未だ不明な点が多い。本研究課題では、我々が開発した光作動性Tetシステム(PA-Tetシステム)を用いて、培養神経幹細胞において分化運命決定因子であるbHLH 型転写因子Ascl1のダイナミックな発現パターンを光操作により人工的に創出し、神経幹細胞の増殖およびニューロン分化過程におけるAscl1下流遺伝子の探索、および、その機能解析等を予定している。改良したPA-Tet-ON 2.0システムを搭載したレンチウイルスベクターを用いて、Ascl1-floxedマウス由来の培養神経幹細胞にPA-Tet-ON 2.0システムを導入し、セルソーター等を用いて、光操作によってAscl1発現を制御可能な細胞のクローン化に成功した。このクローン細胞を用いることによって、Ascl1の遺伝子発現制御をこれまでよりも厳密に実施することが可能となった。3時間周期の光照射によりAscl1振動発現を誘導すると神経幹細胞の増殖が促進され、30分周期の光照射によりAscl1蓄積発現を誘導するとニューロン分化が促進された。このようにして、光操作によりAscl1振動発現あるいは蓄積発現を誘導した細胞を用いて、RNAシークエンスやsingle cell RNAシークエンス解析を実施した。これらの結果を用いて、Ascl1下流遺伝子の同定やネットワーク解析を実施中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

改良した光作動性Tetシステム(PA-Tet 2.0)を搭載したレンチウイルスベクターを用いて、培養神経幹細胞へPA-Tet 2.0システムを導入し、bHLH型転写因子Ascl1の遺伝子発現制御をこれまでよりも厳密に実施可能な細胞のクローン化に成功した。PA-Tet-ON 2.0システムを使用したため、ドキシサイクリンを加えるまでは明所にて培養可能であるため、RNAシークエンスやsingle cell RNAシークエンス解析に使用する細胞の準備を一度に大量に行うことが可能となった。さらに、改良したPA-Tet-ON 2.0システムは従来のPA-Tetシステムよりも高い転写活性を示すため、長期的な分化誘導実験等に適している。そのため、光操作した神経幹細胞のRNAシークエンス解析について当初の予定よりも進展が見られた。また、NGS解析を実施するための解析ツールのセットアップについても、当初の予定よりも進展が見られた。

今後の研究の推進方策

これまでの研究において、神経幹細胞の細胞増殖・分化過程で、分化運命決定を制御するbHLH型転写因子が示す振動発現などのダイナミックな発現動態に着目し、それらが細胞分化の正確さやタイミングを制御する重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。本年度は、改良した遺伝子発現の光操作システムを使用して、bHLH型転写因子Ascl1のダイナミックな発現変動を人工的に制御した細胞を用いて、RNAシークエンス解析を実施した。さらにAscl1下流遺伝子の探索やネットワーク解析を実施中である。bHLH型転写因子などのproneural遺伝子やホメオボックス転写因子、エピゲノム制御因子、各種の細胞シグナル因子に着目してAscl1下流遺伝子の探索を行う。今後は、このようにして同定したAscl1下流遺伝子について、機能解析を実施する。さらに、これらのAscl1下流遺伝子の発現動態について、ライブイメージング技術を用いて可視化する。bHLH型転写因子とそのターゲット因子等の複数の因子の遺伝子発現を同時に制御するために、多色光を用いて体系的に光操作し、これらの因子がどのように協調的に機能して、細胞増殖やニューロン分化のタイミングを制御しているのかを解析する。さらに、オルガノイドや脳組織中においてもニューロン分化運命決定因子群の発現の光照射を試みる。そのために、3次元組織において使用可能な光操作技術の開発にも取り組む。このような解析や技術開発は、ヒトの神経変性疾患・神経障害の治療や、再生医学に適応するための新規戦略の開発にも繋がると期待される。

次年度使用額が生じた理由

学会発表がweb会議に変更になり、予定していた旅費が不要になったため、残金が発生した。次年度で予定している遺伝子発現解析実験に使用する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Functional rejuvenation of aged neural stem cells by Plagl2 and anti-Dyrk1a activity.2022

    • 著者名/発表者名
      Kaise T., Fukui M., Sueda R., Piao W., Yamada M., Kobayashi T., Imayoshi I., Kageyama R.
    • 雑誌名

      Genes and Development

      巻: 36 ページ: 23-37

    • DOI

      10.1101/gad.349000.121.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Cell cycle arrest determines adult neural stem cell ontogeny by an embryonic Notch-nonoscillatory Hey1 module2021

    • 著者名/発表者名
      Harada Y., Yamada M., Imayoshi I., Kageyama R., Suzuki Y, Kuniya T., Furutachi S., *Kawaguchi D., *Gotoh Y.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 12 ページ: 6562

    • DOI

      10.1038/s41467-021-26605-0.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] An Optimized Preparation Method for Long ssDNA Donors to Facilitate Quick Knock-In Mouse Generation2021

    • 著者名/発表者名
      *Inoue YU., Morimoto Y., Yamada M., Kaneko R., Shimaoka K., Oki S., Hotta M., Asami J., Koike E., Hori K., Hoshino M., Imayoshi I., *Inoue T.
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 10 ページ: 1076

    • DOI

      10.3390/cells10051076.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 光操作技術とNGS解析を用いた、神経幹細胞の制御メカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      山田真弓
    • 学会等名
      第18回成体脳新生ニューロン懇談会
  • [学会発表] 「青色光」による遺伝子スイッチの制御2021

    • 著者名/発表者名
      山田真弓
    • 学会等名
      バイオインダストリー協会“未来へのバイオ技術”勉強会
    • 招待講演
  • [学会発表] Analysis of neural stem cell regulatory mechanisms using optogenetics2021

    • 著者名/発表者名
      Mayumi Yamada, Itaru Imayoshi
    • 学会等名
      第16回生命医科学研究所ネットワーク国際シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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