研究課題/領域番号 |
20K06669
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
久保 稔 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 特任講師 (30342778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞間相互作用 / 次世代シーケンシング / 1細胞解析 / リプログラミング / 幹細胞 / 透明細胞 |
研究実績の概要 |
生物の形作りには、隣り合う細胞同士の相互作用が重要である。しかし植物では、隣り合った細胞の間に細胞壁が存在し、動物細胞のように細胞同志が直接、接することができない。そのため、動物とは異なった細胞どうしの相互作用があると考えられるが、その実態は限られたものしか知られていない。そこで本研究課題では、隣り合った1個1個の細胞の遺伝子の働きを調べることで、細胞間の相互作用で働く遺伝子を探索し、それらの働く仕組みを明らかにすることを試みている。 ヒメツリガネゴケの切断葉では、切り口に面した葉細胞の幾つかがリプログラミングし、幹細胞である頂端細胞となる。そこでこの幹細胞形成に関わる分子機構を明らかにするために、切断面に面した葉細胞の計時的な1細胞トランスクリプトーム解析を行った。 また、コケ植物であるオオミズゴケの葉は一層の細胞からなり、らせん状の細胞壁肥厚を持つ透明細胞を取り囲むように葉緑細胞が形成されることに着目し、これらの葉細胞の分化過程に関わる分子機構を明らかにするために、次世代シーケンサーを利用したRNA-seqを行った。まず得られたRNA-seqデータからde novo アセンブリによるトランスクリプトリファレンスの作成を行った。次に、そのデータを基に維管束植物の道管や繊維細胞分化に働くVNS転写因子のホモログを探索した結果、オオミズゴケVNS遺伝子(SpVNS1A~SpVNS4A)を7個単離した。これらをベンサミアナタバコで一過的に発現させたところ、3遺伝子(SpVNS1A, SpVNS3A, SpVNS4A)について、二次璧肥厚と細胞死を誘導する転写活性を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒメツリガネゴケの切断葉において、切断面に面した葉細胞の計時的な1細胞トランスクリプトーム解析を行った。加えて、特徴的な2種類の葉細胞を持つオオミズゴケにおいて、次世代シーケンサーを利用したオオミズゴケのトランスクリプトリファレンスの作成を行い、維管束植物の道管や繊維細胞分化に働くVNS転写因子のホモログを7遺伝子、単離した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ヒメツリガネゴケのリプログラミングする細胞で働く遺伝子の同定、リプログラミングする細胞による側方抑制に関わる遺伝子群の探索、切断葉における遺伝子発現ネットワークの構築、を随時行う。 また、オオミズゴケ葉における透明細胞と葉緑細胞の1細胞解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シーケンサーを用いた1細胞トランスクリプトーム解析の一部を次年度に実施することにしたため、それにかかる費用を繰り越した。
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