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2021 年度 実施状況報告書

ニューロン反発因子を介した大脳皮質形成機構

研究課題

研究課題/領域番号 20K06670
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

廣田 ゆき  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00453548)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード大脳皮質形成 / ニューロン移動 / ニューロン反発因子
研究実績の概要

哺乳類大脳皮質形成過程では、脳室帯で誕生した興奮性ニューロンは脳表層に向けて移動し、辺縁帯に到達すると移動を停止する。それにより後続のニューロンが停止したニューロンを追い越して最表層に到達し、より遅い時期に産生されたニューロンがより表層に配置する。ニューロン移動停止はこの特徴的な層形成パターンに貢献する重要なステップであるが、その制御機構には不明な点が多く残されている。
私たちはこれまでにリーリン受容体VLDLRのKOマウスにおいてニューロン移動停止および辺縁帯形成が損なわれることを報告した(Hirota et al., Development, 2020)。このことはリーリンシグナルがニューロン移動停止と辺縁帯形成を介して層形成を制御することを示している。しかしVLDLR KOマウスで辺縁帯に進入する細胞は少数に留まったことから、ニューロン移動停止は従来的なリーリンシグナル以外の未知のシグナルによっても制御されると推定された。この推定に基づき、辺縁帯に豊富に存在するニューロン反発因子に着目し、in vitroで検討を行い2つの新規知見を見出した。第一にFLRT2によるニューロン反発作用にApoER2が関与することを見出した。この結果はリーリンシグナルが現在まで別個に考えられているFLRT2シグナル経路とクロストークしてニューロン移動停止を制御する可能性を示唆する。また第二に、CSPGが辺縁帯直下に到達する時期のニューロンに反発作用を示し、その作用がコンドロイチン硫酸鎖を分解すると減弱することを新規に見出した。この結果はCSPGが辺縁帯内へのニューロンの進入を阻止するという新規の機能を有することを示唆する。本研究によりリーリンシグナル、FLRT2, CSPGの関与する複数のシグナルの作用機序を明らかにすることで、頑強性を持つニューロン移動停止メカニズムに迫りたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

昨年度までにCSPGの受容体として知られる分子のうち、PTPRS,PTPRF/LARが辺縁帯直下の移動ニューロンに発現し、ニューロン移動を制御することを見出した。さらに、リーリン過剰発現による凝集塊形成系においてとこれらの受容体をノックダウンしたところ、凝集塊内部の中空構造の形成が不完全になったことから、CSPGによりニューロン移動と辺縁帯形成が制御されている可能性が示唆された。また、FLRT2の受容体として知られるUnc5ファミリー下流分子はカドヘリンのエンドサイトーシスによる細胞内取り込みを介して細胞接着性を変化させることが知られているが、昨年度までに、移動停止時期のニューロンが辺縁帯直下で複数のカドヘリンを発現し、これらの一部は移動停止に関与することが示唆された。これらの知見はニューロン反発因子による大脳皮質ニューロン移動停止作用を示している。本研究によりリーリンシグナル、FLRT2, CSPGの関与する複数のシグナルの作用機序を明らかにすることで、頑強性を持つニューロン移動停止メカニズムに迫りたいと考えている。

今後の研究の推進方策

(1) FLRT2によるニューロン移動制御機構
FLRT2の受容体として知られるUnc5ファミリー下流分子はカドヘリンのエンドサイトーシスによる細胞内取り込みを介して細胞接着性を変化させるという報告がある。細胞移動停止時に発現するカドヘリンをscRNA-seqデータベースより探索し、複数のカドヘリンの発現を見出したため、これらがFLRT2シグナルおよびリーリンシグナルにより制御されるかを検討する。
(2)CSPGによるニューロン移動停止の制御機構
CSPGからの反発時に受容体PTPRSおよびRtn4rの局在に変化があるかをストライプアッセイにより検討する。また、in vivoでのリーリンによる細胞凝集への関与が示されているため、培地にリーリンを添加した場合の局在変化を検討する。

次年度使用額が生じた理由

昨年度までに、移動停止時期のニューロンが辺縁帯直下で複数のカドヘリンを発現し、これらの一部は移動停止に関与することが示唆された。これらのカドヘリンがリーリンシグナルで制御されるかをin vitroで調べる実験を新たに行っている。マウスの交配計画上、翌年度に多くのリーリン受容体KOマウスを使用しての実験が可能となるため、翌年度に初代培養実験に必要な試薬等を購入し実験を行う予定とした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Dysfunction of the proteoglycan Tsukushi causes hydrocephalus through altered neurogenesis in the subventricular zone in mice2021

    • 著者名/発表者名
      Ito N, Riyadh MA, Ahmad SAI, Hattori S, Kanemura Y, Kiyonari H, Abe T, Furuta Y, Shinmyo Y, Kaneko N, Hirota Y, Lupo G, Hatakeyama J, Abdulhaleem M FA, Anam MB, Yamaguchi M, Takeo T, Takebayashi H, Takebayashi M, Oike Y, Nakagata N, Shimamura K, Holtzman MJ, Takahashi Y, Guillemot F, Miyakawa T, Sawamoto K, Ohta K.
    • 雑誌名

      Science Translational Medicine

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.1126/scitranslmed.aay7896

    • 査読あり
  • [学会発表] 解剖学教育と大脳皮質発生研究2022

    • 著者名/発表者名
      廣田ゆき
    • 学会等名
      第127回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [学会発表] マウスの大脳新皮質神経細胞移動に関与するカドヘリンの検索2021

    • 著者名/発表者名
      齋藤里香穂、野﨑恵太、佐野ひとみ、廣田ゆき、仲嶋一範
    • 学会等名
      第64回日本神経化学会大会

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公開日: 2022-12-28  

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