基部-先端、 中央-周縁、 向軸-背軸の3つの軸に沿った植物器官のパターン形成メカニズムを研究対象とし、 イネの葉における先端側の葉身と基部側の葉鞘が一つの「葉」という器官の中で組織として分化し、 細胞が運命決定されるのかを理解するための解析を行っている。 昨年度成果より、葉身が形成されるかどうかに寄与する第3染色体に座乗する遺伝子を明らかにした。最終年度の研究では、 前年度成果に加えて、少なくとも8つの遺伝子座が葉身と葉鞘のパターン形成に関わることを明らかにした。また、それら遺伝子座の作用は、イネの成長段階において異なり、成長段階の特定のステージで顕著に作用していることが示された。本研究を始める前には予想していなかった結果が得られた。 研究開始以前は、3つのOsBLADE-ON-PETIOLE (OsBOP) 遺伝子群が葉鞘の運命決定に重要であることを明らかとしていた。本研究を通じて、OsBOP遺伝子群に加えて葉のパターン形成に関わる9つの遺伝子座のはたらきを示すことができた。研究期間全体の成果として、イネの成長段階に応じて葉のパターン形成制御を担う遺伝子が異なる可能性が示された。さらに、OsBOP遺伝子群に代表される葉ではたらく遺伝子群と、葉のみではなくメリステムを含むその他組織を含めてはたらく遺伝子群が協調する仕組みの存在が示唆された。これらの遺伝的仕組みの分子的背景は,本研究およびこれまでの先行研究を鑑みて、未報告な知見と考えられ、さらなる研究の深化が必要である。
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