研究課題/領域番号 |
20K06681
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増田 建 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00242305)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヘム / 葉緑体 / レトログレードシグナル / 情報伝達 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
本研究では、植物細胞におけるヘム依存レトログレードシグナルの分子機構の解明を目的としている。その解明には、情報伝達に関わる、感知、伝達、応答の機構を明らかにすることが重要である。今年度はヘム依存レトログレードシグナルの伝達機構の解明を目的として、ヘム結合性ABCトランスポーターの解析を中心に行った。 ヘム結合性を示したシロイヌナズナABCG23はヒトABCG2と同様、N末端側にヌクレオチド結合部位、C末端側に6回の膜貫通領域を有する、White-Brown Complex (WBC)ファミリーに属するHalf-molecule typeのABCトランスポーターであることが明らかにした。in vitro転写・翻訳により、プロテオリポソームとして発現させたABCG23全長タンパク質は、ヘム結合性を示し、ホモ二量体を形成することを明らかにした。またイメージング解析により、ABCG23が葉緑体に局在することを明らかにした。また、ABCG23のATPase活性が高濃度のATPでは抑制されること、ヘムやポルリフィンはATPase活性に大きな影響を及ぼさないことを明らかにした。 さらにABCG23の膜貫通領域の間に存在するループ領域がヘム結合性を示すことを見出した。トリプトファン蛍光の消失から求めた解離定数(Kd)は約50 nMであり、他のポルフィリンにも同様の特異性を有していた。このループ領域内に保存されている2つのシステイン残基が分子内でジスルフィド結合することが明らかにした。さらにヘム結合性がレドックス制御を受けることを見出した。 以上の結果から、ABCG23はヒトABCG2と同様に、膜貫通領域の間に存在するループ領域のみでヘム結合性を示すが、ヒトABCG2とは異なり、システイン残基のレドックス状態に応じてヘム結合性が変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レトログレードシグナルの伝達に関わる、ABCトランスポーターの解析については、順調に進展しているが、受容および応答に関わる機構の解析については、まだ着手できていない部分がある。
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今後の研究の推進方策 |
シグナル伝達機構についての解析は、これまでの生化学的解析をさらに進展させていくとともに、分子遺伝学的による遺伝子機能の解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより学会が全てオンラインで行われたため、旅費の支出がなかった。また、論文の投稿料が予算額より少なくて済んだ。次年度も学会による出張が行われるかは不明だが、計画的に予算を執行していきたいと考えている。
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