研究課題/領域番号 |
20K06687
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
明石 欣也 鳥取大学, 農学部, 教授 (20314544)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乾燥ストレス / 植物 / 根系 |
研究実績の概要 |
地球上の植物生産性を律速する環境要因のうち、乾燥ストレスは最も甚大な影響を及ぼすことが知られる。地球上には乾燥に極度に強い野生植物が多く知られているが、そのストレス耐性を担う分子機構の多様性については、不明な点が多い。本年度において、乾燥ストレスに対して強い耐性を示すアフリカ・カラハリ砂漠原産の野生種スイカにおいて、前年までに見出されていたCLCOL1根系促進因子に加え、その根系組織においてストレスにより発現誘導されるが、乾燥ストレスへの耐性が低い栽培種スイカでは誘導されない遺伝子として、新たにCLZFB2転写調節遺伝子が見出された。このCLZFB2遺伝子のプロモーター配列とGUSレポーター遺伝子を連結した配列を野生種スイカの毛状根に導入した形質転換スイカを作出し、同遺伝子発現の組織特異性を解析したところ、同遺伝子が根端分裂細胞に特異的に発現する傾向が示唆された。また、CLZFB2遺伝子をDEX誘導型プロモーターに連結して毛状根野生種スイカに形質転換し、浸透圧ストレスに対する根系発達応答を解析したところ、CLZFB2を誘導した野生種スイカでは、浸透圧ストレスに応答した根系発達が顕著に抑制されることが示された。このことから、CLZFB2は乾燥に応答して誘導されるが、根系発達には阻害的に作用し負のフィードバック制御因子として機能することが示唆された。これらの結果は、野生種スイカにおける乾燥への応答には、その根系発達を正および負に制御する因子群の情報伝達ネットワークが関与することを示唆しており、野生植物の環境応答の多様性を分子レベルで示しているものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾燥耐性の異なる植物系統間で発現レベルが異なる新たな遺伝子を同定することができた。当初計画の遺伝子解析について順調に実験遂行できている。ただし際立った学術的ブレークスルーが成し遂げられたわけではないので、「おおむね順調に進展している」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
乾燥耐性の野生種スイカの根系発達を担う因子候補群の機能解析の一環として、これまで主に進めてきた毛状根野生種スイカ実験系に加え、シロイヌナズナやイネ等のモデル植物における分子挙動との比較解析を進め、当該遺伝子群の機能と植物多様性についてさらに情報収集を進めたく考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウイルスの世界的流行に伴い、科研費のみならず他の研究予算における旅費の支出が激減したため、消耗品へ振り替えることとしたため当該年度の科研費執行額が当初予算より少なく、次年度使用額が生じた。次年度においては、アルバイトを雇用することで研究のさらなるスピードアップを図る予定であり、執行額が今年度に比べ大幅に増加する見通しである。
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