研究課題/領域番号 |
20K06688
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
深澤 壽太郎 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (90385550)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジベレリン / 花成 / 信号伝達 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
いつ花を咲かせるかは、植物において最も重要な決定事項の1つであり花成と呼ばれる。花成は主に4つの制御経路が知られており、ジベレリン(GA)による経路もその1つである。これらの経路は冗長的であり、最終的に花成統合遺伝子FT, SOC1, LFYに集約される。GAによる花成制御は、「葉におけるFTの発現促進」と「茎頂におけるSOC1, LFYの発現促進」と離れた2箇所の組織で制御される。短日条件下では、花成直前にGA量が爆発的に増加し花成が促進される。これまでに申請者は、GA信号伝達の抑制因子DELLAと相互作用する転写因子GAF1を単離し、DELLAはコアクチベーターとして、もう1つの相互作用因子TPRはコリプレッサーとして機能することを示した。GAF1複合体はGA依存的に転写活性化複合体から抑制複合体に機能転換することで標的遺伝子であるGA生合成遺伝子の発現を制御し、GAフィードバック制御の中心的な役割を担うことを明らかにした。GAF1過剰発現体は花成が促進され、gaf1 gaf2変異体は花成が著しく遅延するため、GAF1はGA花成経路に関与すると考えられた。本年度は、RNA-seq解析より抽出されたGAF1標的候補遺伝子の中から、花成に関するGAF1の標的遺伝子として4つの花成抑制遺伝子をGAF1の直接の標的遺伝子として同定した。さらに4つの標的遺伝子の発現部位を明らかにする為、各標的遺伝子プロモーターにGUSを繋いだ形質転換体を作製し、葉または茎頂で発現しており、GA依存的に発現が減少することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GA信号伝達に関与する転写因子GAF1の過剰発現体、欠損変異体を用いた解析からGAF1は、GA花成経路に関与すると考えられた。本年度は、RNA-seq解析によりGAF1依存的に発現が変動する標的候補遺伝子に含まれる、6つの花成関連遺伝子に関して解析を行なった。トランジェント解析、ゲルシフト解析、ChIP解析により、4つの花成関連遺伝子をGAF1の標的遺伝子として同定した。4つの標的遺伝子の発現部位、GA応答性を調べる為、各プロモーターにGUSを繋いだ形質転換体を作製し解析を行なったところ、葉、または茎頂近傍での発現が確認され、GA依存的に発現量が減少することが明らかとなった。これらのGAF1標的遺伝子は、いずれも転写抑制因子として機能しており、葉でFT、茎頂でSOC1の発現を抑制することが明らかとなり、GAによる花成経路の解明を目的とした本研究において、GAによるGAF1複合体が転写抑制複合体を形成し、葉または、茎頂で花成抑制遺伝子の発現を抑制することで花成が促進されることを明らかとした。これらの研究成果は、Plant Cell誌に掲載され、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析によりGAF1複合体は、GA依存的にその構成を変化させることで標的遺伝子のON/OFFを制御することを明らかにした。さらに、転写制御システムにより、GA生合成遺伝子や、花成抑制遺伝子を制御することを示し、GAF1複合体は、GAフィードバック制御ばかりでなく、GA花成経路に関与することが明らかとなった。一方で、GA花成経路では、花成直前にGA量が増加することが報告されているが、どの組織、時期特異的にGA生合成遺伝子の発現変動し、活性型GA量を増加させ、花成を促進するのかなどの詳細な制御は不明であり今後の課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、前年度に作製した形質転換体を用いたGUS染色の解析等が多く、分子生物学的な研究による消耗品の消費が予定より少なかった為、次年度使用額が生じた。次年度は、分子生物学的な解析も増える予定であり、当初の使用予定額は、前年度に比べ50万円、少なかったので、持ち越し額を消耗品の購入に使用する予定である。
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