研究実績の概要 |
いつ花を咲かせるかは、植物において最も重要な決定事項の1つであり花成と呼ばれる。花成は主に4つの制御経路が知られており、ジベレリン(GA)による経路もその1つである。これらの経路は冗長的であり、最終的に花成統合遺伝子FT, SOC1, LFYに集約される。GAによる花成制御は、「葉におけるFTの発現促進」と「茎頂におけるSOC1, LFYの発現促進」と離れた2箇所の組織で制御される。これまでに申請者は、GA信号伝達の抑制因子DELLAと相互作用する転写因子GAF1を単離し、DELLAはコアクチベーターとして、もう1つの相互作用因子TPRはコリプレッサーとして機能することを示した。これまでに、GAF1の標的遺伝子として4つの花成抑制遺伝子 ELF3, TEM1, TEM2, SVP を同定した。本年度は、4つのGAF1標的遺伝子がどうのようにして、花成を制御するかの分子機構の解明に取組んだ。トランジェント解析、ゲルシフト解析、ChIP解析を用いて検証した結果、TEM1, TEM2, SVPは、転写抑制因子として機能しており、葉でFT、または、茎頂でSOC1の発現を抑制することが明らかとった。一方ELF3に関しては、elf3変異体でFTの発現が増加することから、FTの発現を抑制すると考えられたが、ELF3単独では、FTの転写を抑制しないことが明らかとなった。これまでの知見で、ELF3は、ELF4,LUXとEvening Complexを形成し、標的遺伝子の発現を制御することが報告されていた。そこで、Evening Complexが、FTの発現を直接制御するかを検証した結果、Evening Complex の内、LUXがFTのプロモーターに直接結合し、ELF3が、転写抑制能を有することを明らかにした。これらの研究成果は、Plant Cell誌に掲載された。
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