研究課題/領域番号 |
20K06694
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩瀬 哲 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40553764)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 体細胞胚 / 分化全能性 / 脱分化 / 再生 / カルス / エピジェネティクス / ヒストン化学修飾 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
本研究では体細胞胚誘導の分子機構を解明する。体細胞胚誘導は植物が示す分化全能性発揮の一つの指標であり、分子機構の解明は基礎的にも応用的にも重要である。研究の足がかりとして、種々のストレス誘導性を示し細胞リプログラミングを正に制御する転写因子の働きに着目する。この転写因子を発現させた植物体では、外因性のホルモンを添加しない条件でも体細胞胚が誘導されることを、これまでの研究から見出している。初年度は、この不定胚誘導が起きる条件で経時的トランスクリプトーム解析を行った。この結果、誘導後3時間から6時間という早いタイミングで、胚発生に関与する重要転写因子の発現が非胚性の組織で上昇することを見出した。また同様に、転写因子誘導後24時間前後から胚発生時特異的に発現するタンパク質をコードする遺伝子の発現が上昇することを見出した。取得済のデータおよび公開データから、これらの遺伝子の発現制御は、着目しているリプログラム因子の直接的な制御ではなく、下流の別因子が仲介することが示唆された。他方、種々のヒストン化学修飾阻害剤を処理することで、この実験系における体細胞胚誘導が促進されたり、抑制されたりすることを見出した。この結果から、注目している転写因子の機能としてヒストン化学修飾があるという仮説を立てた。重要下流因子の機能解析を加速するために、既知の未熟種子胚を用いた体細胞胚誘導系を立ち上げ、再現性よく不定胚誘導が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりトランスクリプトーム解析を終え、現象の理解と重要な因子の単離と遺伝学的なアプローチとともに生化学的なアプローチによる機能解析をスタートさせている。
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今後の研究の推進方策 |
トランスクリプトーム解析から絞り込んだターゲット因子に関しては、着目している転写因子を発現誘導する植物体とのかけあわせの他、未熟種子胚を用いた体細胞胚誘導系を用いて機能を評価する。また、ヒストン化学修飾に作用する仮説に関しては、注目している転写因子とのタンパク質複合体形成の可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、物品購入が滞り、また旅費の支出がほとんどなくなったため。次年度は、前年度に購入できなかった機器、試薬等の購入をすすめ、研究を円滑に進めていく。
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