研究課題
植物体表にある気孔は青色光に応答して開口し、植物の生育に重要なガス交換を担う。青色光は、受容体であるフォトトロピンを介して孔辺細胞の細胞膜H+-ATPaseを活性化して気孔開口を駆動するが、H+-ATPaseの活性化機構は未だ完全には明らかになっていない。今年度は、フォトトロピンと物理的に相互作用することを見出しているPINK2について、その機能解析を中心として進めた。PINK2は真核生物に高度に保存され、ユビキタスに発現して4つのホモログが冗長的に機能することが知られていたため、まずは薬理学的な解析を進めた。その結果、阻害剤はフォトトロピンが誘導する青色光応答の中でも気孔開口のみを特異的に抑制することを見出した。また、阻害剤を孔辺細胞に処理すると、青色光で誘導される細胞膜H+-ATPaseのリン酸化を完全に抑制した。さらにこの阻害剤は、これまでに調べたどの組織のH+-ATPaseのリン酸化も完全に抑制することから、細胞膜H+-ATPaseを直接リン酸化して活性化する共通のプロテインキナーゼである可能性を見出した。PINK2をコードする4つの遺伝子について、ノックアウトとノックダウンを組み合わせて多重変異体を作成したところ、気孔開口も大きく抑制された。また多重変異体では、実生における細胞膜H+-ATPaseのリン酸化が野生株に比べて低下していた。これらの結果から、PINK2が細胞膜H+-ATPaseを活性化し、気孔開口を仲介する新規シグナル伝達因子であることを見出した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
New Phytologist
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