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2022 年度 実施状況報告書

フィトクロム分子種の機能分化の分子基盤解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06705
研究機関京都大学

研究代表者

長谷 あきら  京都大学, 理学研究科, 名誉教授 (40183082)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードフィトクロム / 分子種 / 舌構造 / N-PASドメイン / 光感度調節 / 避陰応答抑制 / 植物進化
研究実績の概要

植物の光受容体フィトクロムにはフィトクロムA(phyA)とB(phyB)という機能が大きく異なる2つの分子種が存在する。植物は、祖先型のアミノ酸配列の一部を変化させ、この機能分担を実現した。しかしながら、具体的にどのアミノ酸残基がどのような機能に対応しているかは不明である。本研究では、phyAとphyBの配列を混ぜ合わせた分子を設計し、それらを植物に遺伝子導入して発現させ、その性質を調べることでこの謎の解明を目指した。
我々はすでに、フィトクロム分子内のPHYドメインに光応答の感度調節能があることを報告している(Oka et al., 2012)。本年度においては、高感度型のphyA型の舌構造やphyAに特徴的なアミノ酸残基をphyB型に置き換えた「機能喪失型」フィトクロム発現植物と、逆にphyB配列背景にphyA型の部分構造/アミノ酸残基を導入した「機能獲得型」フィトクロム発現植物について、すでに得られている実験結果を整理し、論文発表の準備を進めた。この成果は、フィトクロムの分子構造と機能の関係を理解するうえで大きな意味をもつ。
また、研究の過程で、フィトクロムのN末端側に存在するN-PASドメインがphyA型であると、避陰応答を抑制する活性がフィトクロムに付与されることを発見した。そこで本年度は、phyA型のN-PASドメインを持つ各種キメラフィトクロム発現植物について、胚軸伸長抑制に加えて、花芽形成や核内構造体形成に関する解析を進めるた。また、すでに得られている実験結果を精査し、論文発表の準備を進めた。この成果は、行き過ぎた避陰応答の抑制というphyAがもつ重要な性質に関わるものであり、生理生態学的視点からもその意義は大きい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

フィトクロムのPHYドメイン内に存在する「舌構造」に注目した研究を進め、高感度型のphyA配列に特徴的なアミノ酸残基を低感度型のphyB配列に見られる残基に置き換えたアミノ酸置換変異型フィトクロムを発現する遺伝子導入シロイヌナズナ植物を作出し、信頼度の高い実験結果を得た。また、phyB型からphyA型にアミノ酸残基を置き換える実験も行い、前者と矛盾しない結果を得た。これらの成果を受け、論文発表に向けて、確認実験や結果の整理を進めている。
さらに、生理生態学的に注目されるphyAのもつ避陰抑制機能について、分子内のN-PASドメインが重要な意味をもつことを、すでに作出してあったphyAとphyBのキメラフィトクロム発現植物を再調査することで明らかにした。これらの成果を受け、論文発表に向けて、N-PASドメインがphyA型である分子のふるまいについて、生理学的、細胞生物学的な解析を進めた。さらに、このような機能が自然条件下でどのような意味を持つかを知るた め、野外における光環境の測定を進めた。
以上のように、研究全体としては順調に推移したが、論文発表に向けてはさらなる時間が必要である。

今後の研究の推進方策

以上の結果をまとめ論文として発表することが主な目標となる。以下の2つの論文を投稿する計画である。
1)phyA型のN-PASドメインに避陰応答を抑制する活性があることを発見した。そこで、これまでに得た実験結果をまとめ、原著論文として投稿する。
2)phyA型からphyB型へのアミノ酸置換変異体とphyB型からphyA型へのアミノ酸置換変異体の結果を合わせ、原著論文として投稿する。

次年度使用額が生じた理由

すでに論文投稿に向けた実験はおおむね終わっているが、若干の確認実験が残ってしまった。また、結果の解析や原稿の準備に予想以上に時間がかかった。そこで、引き続き論文投稿に向けた作業を進め、原著論文2報の発表を目指す。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ハクサンハタザオが野外で経験する光環境変動とそれに対する応答2022

    • 著者名/発表者名
      長谷あきら、伊東杏花里、杉坂次郎、本庄三惠 、工藤洋
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会 2022年9月17-19日、京都府立大学

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公開日: 2023-12-25  

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