研究課題/領域番号 |
20K06707
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
高原 未友希 (中田未友希) 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (60707579)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 葉枕 / 力学特性 / 細胞壁 |
研究実績の概要 |
当該年度中に葉枕細胞壁の組織学的解析(切片の化学染色や免疫染色)を行い、他器官との細胞壁成分やその細胞壁内分布の違いの詳細を調べた。その結果、葉枕の運動を担う皮層運動細胞においては、セルロースやペクチンといった一次細胞壁成分の細胞壁内分布が特殊であることを見出した。葉枕皮層運動細胞に見られる特殊な細胞壁分布は調査した10種以上のマメ科植物で共通して見られ、他の様々な植物種・器官・組織で報告されているものとは異なることがわかった。このことから、この運動細胞特有の細胞壁分布がマメ科植物の葉枕の、一般的な組織とは異なるユニークな力学特性と関連する可能性は高いと推定し、有限要素法によるシミュレーションで検証した。その結果、同構造が力学的な伸展性に寄与しうることが見出された。葉枕とその他軸性器官との軸方向への伸展性を比較するため、ポアソン効果を利用した圧縮試験による解析を行った結果、葉枕は他の軸性器官(茎や葉柄)と比べて軸方向の伸展性が大きいことが実証された。 これらの結果から、一般的な組織とは異なるユニークな力学的特性を持つ組織として、マメ科植物の「葉枕」に着目し、「伸展と収縮の反復を可能にする特殊な力学特性を理解する」という本研究の目的の第一段階を達成できたと考え、ここまでの結果を学術論文としてまとめ学術誌に投稿中である。また、プレプリントサーバーbioRxivにおいても公開済みである(doi: https://doi.org/10.1101/2022.03.10.483846)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、葉枕の力学特性について、細胞壁成分の細胞壁内分布をもとにシミュレーションによる検証を行い、力学試験による実証を行った結果、葉枕の力学特性を細胞壁レベルから説明するメカニズムを世界に先駆けて解明することができた。このことから、本研究の目的の第一段階を達成できたものと結論づけている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は葉枕の力学特性、ユニークな細胞壁分布を生み出す分子的メカニズムを理解するため、関連する遺伝子や分子の探索・機能解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、共同研究先への出張や学会出張などが困難であったため、次年度以降に計画を変更した。また、研究の進捗を踏まえ、実験の実施順を一部変更し、細胞壁成分の解析やシミュレーション、論文執筆に集中的に取り組み、遺伝子解析の一部や論文出版など研究費使用を想定していた部分の実施時期を次年度以降に繰り越した。
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