研究課題/領域番号 |
20K06708
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
且原 真木 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (00211847)
|
研究分担者 |
堀江 智明 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (90591181)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アクアポリン / イオン輸送 / 塩ストレス / PIPアクアポリン / 電気生理 / イネ / オオムギ |
研究実績の概要 |
本研究では水輸送機能と同時にナトリウム輸送機能も合わせ持つ、すなわち2つの異なる輸送機能をデュアルで示す新型アクアポリンについて、分子生理学および電気生理学的手法によって分子機能を解明することと、免疫組織化学や形質転換体を用いて生理機能を明らかにすることを目指している。本年度は、これまでに私たちが同定したイネのイオン透過性アクアポリン(icAQP)であるOsPIP2;4について水とイオンそれぞれの透過の分子機構を解明するために、人為的にアミノ酸置換をおこなった変異icAQPを作製して、アリカツメガエル卵母細胞に発現させて輸送基質特異性を解析した。 ホモロジーモデルで示されたイオン輸送の仮説的経路に沿ったアミノ酸バリンをイソロイシンに置換した変異OsPIP2;4V54Iのイオン輸送活性を二電極電位固定法によって解析した結果、この変異によってNa+およびK+イオン透過が阻害されることが示された。この仮説的経路は水透過孔である単量体(モノマー)の孔とも、また単量体が生体膜上で4量体を形成するときにできる中心孔(セントラル孔)とも違う部分であると考えられた。この変異icAQPで置換したアミノ酸はモノマーの水透過孔とは関係なく、実際に水透過性も変異OsPIP2;4V54Iは野生型OsPIP2;4)とで同じであった。 植物体内でのicAQPであるOsPIP2;4の機能を明らかにするために、これまでT-DNA挿入によるOsPIP1;4欠損イネ系統においては塩ストレス下でナトリウムの植物体への蓄積が減少することを示してきた。しかい該当するT-DNA挿入系統は1系統しか得られていなかった。そこで今年度Cripr/Cas9によるOsPIP2;4ノックアウト系統を新たに確立した。この系統のストレス耐性等形質調査は進行中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順調に実験、測定が進行している。本年度はイネのイオン輸送性アクアポリンOsPIP2;4のイオン透過経路についての分子機構を担っているアミノ酸を同定することができた。このイオン透過性OsPIP2;4については論文発表を準備中である。イオン透過性アクアポリンの植物体での生理的役割解明に向けた実験に関しては最終年度での実施に向けての準備が進んでている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度における研究計画は以下のとおりである。 1)仮説的イオン透過経路に沿ってアミノ酸置換を導入することで、イオン透過性の極めて低いOsPIP2;5のイオン輸送活性をOsPIP2;4と同じく程度まで引き上げることができるか(Gain of Function)試みる。 2)icAQPであるHvPIP2:8についても、OsPIP2;4と同じ仮説的イオン透過経路でイオンが輸送されているかどうかを調べる。このためにHvPIP2;8の仮説的イオン透過経路に沿ったアミノ酸を置換した変異体HvPIP2;8を用いて実験をする。この結果によって植物種によらずにicAQPのイオン輸送経路が普遍的であるかどうかを検証する。 3)Crispr/Cas9システムによるOsPIP2;4欠損イネ系統を用いて、OsPIP2;4のイオン輸送活性が、通常環境および塩ストレス環境においてどのような生理的役割を持つのかを明らかにする。
|