研究課題
本研究では水輸送機能と同時にイオン(ナトリウム/カリウム)輸送機能も合わせ持つ新型アクアポリンについて分子メカニズムを解明するとともに植物体における生理機能を明らかにすることを目指した。人為的にアミノ酸置換をおこなった変異イオン透過性アクアポリン(変異icAQP)を作製して、アリカツメガエル卵母細胞に発現させて輸送基質特異性を解析した。昨年度までに水輸送機能を維持しつつ、イオン輸送の仮説的経路に沿ったアミノ酸バリンをイソロイシンに置換したイネ由来の変異OsPIP2;4V54Iのイオン輸送活性が低下することを示した。このV54Iに相当する変異を今年度はオオムギのAQPであるHvPIP2;8に導入して調査した。しかし作成したHvPIP2:8V64Iでイオン輸送性に変化は見られなかった。しかしこの位置のアミノ酸をさらに側鎖の大きなアミノ酸であるフェニルアラニンに変えたHvPIP2;8V64Fでカリウムの輸送性が低下することがわかった。このことからイネとオオムギのイオン輸送経路は基本的に同じであること、また透過経路の幅(孔の径)がicAQP分子種によってわずかに違ってイオン輸送特性に差異が生じることが考えられた。植物体内でのicAQPであるOsPIP2;4の機能を明らかにする実験としてはT-DNA挿入によるOsPIP2;4欠損イネの1系統に加えて、今年はCripr/Cas9によるOsPIP2;4ノックアウト系統を新たに確立した。これらOsPIP2;4欠損系統で根の水透過性が減少すること、またカリウム施肥条件で通常は増加する植物体内でのカリウム蓄積増加が抑制されているデータが得られた。期間全体でicAPQの水透過とイオン透過の経路が分子内で区別されることを実証しイオン透過に関与するアミノ酸を同定した。またicAPQが根の水透過性とカリウム蓄積において機能していることを明らかにした。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 87 ページ: 482~490
10.1093/bbb/zbad020