研究実績の概要 |
本研究は、スンクスを用いて「ウルトラ―サーカディアン」軸の機能連関による消化管運動調節機構を明らかにすることを目的としている。最終年度では、サーカディアンリズムを示す大腸のgiant migrating contractions(GMCs)様の強収縮の中枢性制御機構を検討した。大腸を伸張刺激した際の橋バリントン核及び青斑核のc-Fos発現を免疫組織化学によって検討した結果、大腸伸張刺激によって橋の青斑核におけるc-Fos免疫陽性細胞が増加した。加えて、青斑核のマーカーであるチロシン水酸化酵素(tyrosine hydroxylase: TH)とc-Fosの二重染色を行った結果、TH陽性細胞の多くがc-Fosを発現していた。このことから、スンクスにおいて青斑核がGMCの制御に関与していることを明らかにした。研究期間全体を通じた成果をまとめると、GMCs及び排便が暗期に多く観察され、特に暗期後半で多いことを明らかにした。また、スンクスの排便は明暗周期よりも摂食による支配が大きく、大腸の時計遺伝子発現は摂食リズムによって変動することが明らかになった。また、大腸での時計遺伝子発現(bmal1, per1, cry1)を定量PCR法で検討した結果、自由給餌群でbmal1、per1、cry1はそれぞれZT 24,ZT 12、ZT 18でピークとなる発現リズムを示したが、時限給餌群ではそのリズムが消失していることを示した。さらに、迷走神経と交感神経は、概日リズムに伴う正常なGMCの発生に必須であり、橋の青斑核を介して大腸運動を調節している可能性が示された。
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