研究課題/領域番号 |
20K06715
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 学 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60301785)
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研究分担者 |
吉田 薫 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 教授 (70398973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 受精 / 精子運動 / カルシウム |
研究実績の概要 |
本研究は、精子走化性をはじめとした精子運動調節機構に着目し、Ca2+シグナル系を比較解析して共通性と多様性を理解し、最終的には多様性・種特異性を含めた受精時における精子運動調節の分子機構の全容解明を目標とする。2020年度は下記の研究を行った。 (1) 精子運動調節に関わるCa2+シグナル系の解析: カタユウレイボヤCiona intestinalisを用いて、ゲノム編集によりPMCA遺伝子の遺伝子改変ホヤを作出を試みた。精子が採取出来る成熟個体を得ることを目指し,飼育中である。PMCAとSAAFの相互作用および立体構造解析を行うための組換えタンパク質発現系として、これまで確立した昆虫細胞での発現に加え、哺乳類細胞での発現系構築に着手した。 (2) 硬骨魚類精子の運動開始を担うCa2+シグナル系の同定: CatSperの存在しない真骨魚類でも、精子運動の開始にはCa2+シグナル系が関与する。そこで、哺乳類及びホヤでの知見や手法を魚類精子に適応し、真骨魚類精子の運動開始に関与する分子の同定を目指している。今年度はまず過去の論文により精子運動開始との関連が示唆されているAquaporinに着目し,クサフグTakifugu alboplumbeusおよび,マコガレイPseudopleuronectes yokohamaeの精子で発現しているAquaporinの同定を進めた。また,精子形成期における遺伝子発現を調べるため,成熟期における精巣のサンプリングを行った。 (3) 脊索動物精子の運動調節におけるCa2+シグナル系の調節機構: 精子走化性の種特異性の解明を目指し、既に精子誘引物質の構造が判明しているスジキレボヤAscidia sydneiensis, ユウレイボヤCiona savignyi, Phallusia mammilata, Phallusia philliphinensisのPMCAの配列を同定し,カタユウレイボヤPMCAの配列と比較した。そして,全てのホヤには精巣特異的なPMCAのバリアントがあること,細胞外ループ中に種特異的なアミノ酸配列があることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により,4~6月はほぼ研究に着手できなかったため,クサフグの繁殖期に先立つ精巣成熟期のサンプリングを行う事が出来ず,1年先送りとなってしまった。その以外は概ね順調に研究が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き下記の3テーマに分けて研究を推進する。 (1) 精子運動調節に関わるCa2+シグナル系の解析: カタユウレイボヤを用い、現在作成しているPMCAの遺伝子改変ホヤを用いて、精子運動の解析を行う。さらに,ゲノム編集により他のCa2+シグナリング系に関わる遺伝子の遺伝子改変ホヤの作出を試みる。また、PMCAの立体構造解析を試みる。 (2) 硬骨魚類精子の運動開始を担うCa2+シグナル系の同定: クサフグ及びマコガレイを用い,引き続きAquaporinの精子運動調節への関与を解析する。また,Ca2+チャネル及び浸透圧感知分子の同定を、PiezoやTrp等,ホヤやマウスで浸透圧応答の機能が報告されている分子を中心に検討する。あわせてゼブラフィッシュ等の淡水モデル小型魚類でも検討を行う。 (3) 脊索動物精子の運動調節におけるCa2+シグナル系の調節機構: PMCAが同定された5種のホヤを用い,SAAFとPMCAの相互作用における種特異的な相互作用を調べる。特にカタユウレイボヤにおいて詳細に解析を行うため,(1)で記したようにPMCAの立体構造解析の準備を行う。また,カタユウレイボヤ精子を用いて膜電位及びpH変化が走化性に関与を検討する。得られた結果をもとに、哺乳類やウニの知見と比較しながら、可能であれば責任分子の同定も行い、共通性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により4-6月期の研究が停止し,年度末までに遅延の回復に務めたが,最終的には遅延したまま未使用研究費が生じた。 令和3年度において,遅延したクサフグ関連の研究を積極的に進め,研究費の使用を図る。
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