研究課題
本研究では、海水馴化させたメダカの塩類細胞で発現誘導される“Osmotic stress transcription factor 1(Ostf1)という転写因子の発現制御様式や機能の差異が広塩性魚と狭塩性魚の違いを生んだのでは?”という仮説の検証を行っている。R4年度は、ゲノム編集技術TALENにより作成したOstf1-KOメダカの表現型解析を実施した。淡水飼育した野生型メダカ(FW-WT)、500 mOsmの高浸透圧処理4時間後の野生型メダカ(500-WT)、500 mOsmの高浸透圧処理4時間後のOstf1-KOメダカ(500-KO)の鰓をサンプリングし、RNA-Seq解析を行った。その結果、細胞間接着に関わるカドヘリンや細胞骨格タンパク質であるアクチンおよびネクチン1、CDC42EP3といった遺伝子の発現が、500-WT群に比べて500-KO群で減少した。特に、CDC42EP3の発現は高浸透圧処理後4時間でピークに達した後に減少するが、500-KO群では高浸透圧処理による発現増加は見られなかった。CDC42EP3は、Rho GTPaseに結合し、アクチン繊維の構築に関与することが知られているため、鰓組織におけるアクチン重合状態をPhalloidine-Alexa488を用いて可視化した。その結果、500-WT群の鰓における重合アクチン量はFW-WTに比べて多いことが解った。現在、500-KO群の重合アクチン量について解析している。これまでの研究から、Ostf1は高浸透圧刺激により、一過的に上昇する転写因子であり、そのエフェクター分子としてアクチン重合に関わるCDC42EP3が主要な候補遺伝子であること、高浸透圧性の細胞収縮に対応した細胞内骨格系制御に重要な役割を果たしていることが示唆された。
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