研究課題
魚類のウロコは、骨を作る細胞(骨芽細胞)と骨を壊す細胞(破骨細胞)が共存する骨様の組織である。体表に細胞が存在する為、ホールマウントでの形態学的な解析が容易である。これらの特徴に注目し、申請者はウロコを骨モデルとしたアッセイ系を開発して、様々なホルモンの作用を調べてきた。最近、睡眠を調節するホルモン(メラトニン)がウロコの骨芽細胞で産生され、そのメラトニンが破骨細胞の活性を抑制するホルモン(カルシトニン)の産生を促進することを見出した。本年度は、ウロコの再生過程におけるメラトニンの発現量を調べるために、再生する前の成体のウロコ(ontogenicのウロコ)と再生14日目のウロコにおけるメラトニン含量を調べた。その結果、ontogenic のウロコのメラトニン含量は、2.96±0.71 (pg/g tissue)であったが、再生ウロコのメラトニン含量は、18.64±8.32 (pg/g tissue)であり、ontogenicのウロコと再生ウロコの間に有意差が認められた。一方、ウロコにおけるカルシトニンの発現を調べた。キンギョの成体のウロコを用いて、ホールマウントによる免疫染色を行った。その結果、成体のウロコでは表皮側及び真皮側に分布する細胞そのものの数が少なく、陽性反応が認められなかった。次に、再生8日目のウロコでカルシトニンの検出を行った。その結果、再生ウロコではウロコ全体が染色され、特に中央部に強い発色が認められた。また、表皮側にある細胞も、真皮側にある細胞もカルシトニン陽性反応を示したが、特に真皮側の立方状の細胞が強く反応していた。さらにキンギョにはカルシトニンが2種類存在する報告しており、カルシトニンを分泌する内分泌腺では1型のカルシトニンが発現しており、一方、ウロコの骨芽細胞では、2型のカルシトニンが発現していることも判明した。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度に計画していたウロコの再生過程におけるメラトニン合成及びカルシトニンの発現解析が順調に進行して、ウロコの骨芽細胞で2型のカルシトニンが発現していることを見出すことができた。
次年度は、骨芽細胞で産生されるメラトニンによるカルシトニンの制御機構を調べる為に、in vitroのウロコの培養系を用いて、メラトニン添加及びメラトニンのアンタゴニスト添加によるカルシトニンの発現量の変化を調べる。さらに本年度、ゼブラフィッシュのウロコにもカルシトニンが発現していることをRNAseqで明らかにしたことから、カルシトニンをノックアウトしたゼブラフィッシュを用いてウロコの再生を調べていく予定。
次年度に分担する研究がメインとなる分担者が、次年度に必要な消耗品を購入するために、繰り越したため。
すべて 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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