研究課題/領域番号 |
20K06721
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
竹内 栄 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20226989)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニワトリ / 羽形成 / 性差 / ホルモン制御 / メラノコルチン系 / プロラクチン系 / 甲状腺ホルモン系 |
研究実績の概要 |
鳥類の羽は哺乳類の毛と同様に,表皮細胞に由来する皮膚付属器である。ニワトリでは,鞍羽に顕著な性差が見られ,雌では褐色(ユーメラニン色)を呈する丸型羽であるのに対し,雄では光沢のある赤褐色(フェオメラニン色)の飾り羽で,尖った先端部には小羽枝を欠くフリンジ構造がみられる。羽の性差形成については雄型の羽が雌雄に共通なデフォルトであり,雌型羽は卵巣由来のエストロゲンの作用によって形成れること,このエストロゲン作用には甲状腺ホルモンが不可欠であること, 甲状腺ホルモン欠乏下では,性とは無関係に雄鞍羽に類似なフリンジ構造をもつ光沢のある赤褐色羽が形成されることなどが知られていたが,羽形成におけるホルモン作用の分子機構については不明な点が多く残されてきた。本研究では,ニワトリの羽形成におけるエストロゲン系,メラノコルチン系,甲状腺ホルモン系のクロストークおよび,遅羽遺伝子の解析を通して,甲状腺ホルモンと酷似した働きが報告されているプロラクチンの羽形成における作用機序の検討を行ってきた。本年度は,これらのホルモン系のクロストークの場である羽髄細胞の初代培養系をもちいた解析から,プロラクチンが様々な細胞成長因子や甲状腺ホルモン系因子の発現制御に関わることを明らかにするとともに,甲状腺ホルモン受容体の新規バリアントを同定し発現解析や機能解析から甲状腺ホルモン系の新たな制御系の可能性が示唆された。さらに,マイクロアレイのデータ解析,およびRNAseq解析から羽の性差形成に関わると考えられる候補因子を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では羽髄細胞の初代培養系をもちいて,ASIP遺伝子のプロモーターアッセイを実施することを主要な目的としていたが,この解析に用いる十分な細胞を得ることができなかったので,代わりに得られた細胞に対するプロラクチン投与の影響についての解析を行い,プロラクチン系について新しい知見が得られた。また,この解析の中で,新規の甲状腺ホルモン受容体mRNAの選択的スプライシングバリアントを同定し,その機能解析などを実施することができた。これらの成果は,研究目的であるニワトリ羽の形成や性差形成の仕組みを明らかにするうえで有用と考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,羽髄細胞の初代培養細胞をもちい,エストロゲンや甲状腺ホルモンによるメラノコルチン系遺伝子の発現変化を解析するとともに,ASIPクラス1プロモーターについてのプロモーターアッセイを実施する。また,羽包の表皮性細胞の初代培養系をもちい,これまでに同定したプロラクチン系の下流因子の,表皮性細胞の細胞増殖に及ぼす影響を解析する。さらに,マイクロアレイのデータ解析,およびRNAseq解析から羽の性差形成に関わると考えられた候補因子について,中和抗体を用いた機能解析や発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大防止のため,所属機関において活動制限があったため,予定した研究の遂行に支障をきたしたため次年度使用額が生じた。本年度は現時点では密をさけるために実験室使用の人数制限はあるものの,活動時間の調整によりほぼ通常の活動が可能である。前年度十分にできなかった初代培養に使用すると共に,学会発表や論文発表にも使用する予定である。
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