研究課題/領域番号 |
20K06723
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山中 明 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20274152)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 表現型可塑性 / 毛状鱗粉 / 幼虫体色 |
研究実績の概要 |
令和2年度からの継続実験として、ムラサキシジミ成虫の複眼の色彩と交尾行動の影響について検討したが、実験室内で交尾に至らずという結果であった。今後、個体数等を増やし、検討する必要がある。令和3年度に新規に計画した、毛状鱗粉・鱗粉微細構造の異なる成虫の温度耐性に関する解析に関しては、実験室内で毛状鱗粉の異なるシジミチョウ科・タテハチョウ科の各種チョウを羽化させ、室温(25℃)に静置した状態から高温側あるいは低温側にシフトさせたときの体温変化の計測法の確立途中の段階である。 本研究の目的のひとつは、毛状鱗粉形成ならびに鱗粉細胞の微細構造の構築にホルモン系が関与している可能性があるのかを証明することにある。タテハチョウ科のルリタテハの脚の鱗粉に着目した。ルリタテハ幼虫をLD25およびSD18条件下で飼育し、羽化成虫の表現形質を比較したところ、脚の鱗粉の色彩パターンに違いが認められた。LD25成虫では黒色鱗粉の割合は少なく、白および茶色の鱗粉の割合が多かった。一方、SD18成虫では黒色鱗粉の割合が多く、白および茶色の鱗粉の割合は少なかった。次に、鱗粉の色彩調節が脳由来の因子(SMPH)の投与によって変化するかを調べた。ルリタテハSD18蛹にヒメアカタテハの長日蛹の脳より夏型ホルモン活性物質を含む粗抽出液画分を作成し、蛹化当日のルリタテハのSD18蛹に25脳相当量を投与した。投与個体より羽化した成虫の中および後脚の脛節およびふ節では、対照実験区の個体ものと比べ、白色と茶色の鱗粉の割合が増加した。つまり、今回見出した表現形質が夏型ホルモンによって調節されていることが示唆された。本鱗粉の微細構造について解析を進めている段階である。別に、ナガサキアゲハおよびモンキアゲハの蛹体色発現に影響を及ぼす主たる要因を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度において、緯度の異なる生息地(山口・北海道)より採集したチョウ類を累代飼育し、成虫の温度耐性を計測する。また、北方の個体群と南方の個体群を交配させることで、どちらの形質が次世代に引き継がれていくのかを検討し、温度耐性という形質の意義を考察していくと計画していたが、コロナ禍の影響のため、学内の諸業務との関係上、県内に止まらざるをえず、地理的変異に関する研究は進んでいないため。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度の毛状鱗粉・鱗粉微細構造の異なる成虫の温度耐性に関する解析がコロナ禍により推進できなかったので、令和4年度にその計画を組み込んで推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、国内学会がすべてオンライン開催に、更には、調査旅費として県外出張ができず、次年度使用額が生じた。本次年度使用額は、主に、物品としては消耗品費の購入、成果発表旅費と調査旅費、ならびに論文校閲等に使用する計画である。
|