チョウの翅の色模様形成過程が正常に進行するためには、蛹の翅組織はクチクラに接触していなければならないことがわかった。形成体からのモルフォゲン分子が周辺の細胞に作用するにはクチクラとの接触が必要なのである。クチクラの主成分であるキチンの細胞内動態を観察したところ、最初にキチン構造体が核付近に形成され、そこから上皮表層および深層へと延長されていくと思われる。表層へと延びた構造体は鱗粉の前駆体であると推測される。一方、抗体等の蛋白質を直接翅組織の細胞へと導入する方法を開発した。この方法により、ゲノム編集等に頼ることなく、色模様形成に寄与する蛋白質の機能を生体内かつリアルタイムで阻害することができた。
|