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2020 年度 実施状況報告書

珪藻シリカ細胞壁の形態可塑性を司る遺伝的因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 20K06726
研究機関福井県立大学

研究代表者

佐藤 晋也  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (80709163)

研究分担者 山田 和正  福井県立大学, 海洋生物資源学部, 助教 (20778401)
出井 雅彦  文教大学, 教育学部, 教授 (60143624)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード珪藻 / 形態可塑性 / 塩分ストレス / トランスクリプトーム
研究実績の概要

Pleurosira laevisは世界中の淡水~汽水域に生育する広塩性の珪藻である。そのシリカ細胞壁(被殻)の殻面には眼域とよばれる構造が存在する。眼域からは粘液が分泌され,細胞の基質への付着,および群体形成に寄与している。また,形態の差異にもとづいていくつかの変種や品種が記載されており,そのうち,眼域が突出せず平らな殻面をもつP. laevis f. laevisと,眼域が数マイクロメートル突出し殻面が隆起したP. laevis f. polymorphaの存在が知られている。
本研究ではP. laevisの4株(沖縄県産,福井県産,アメリカ産のP. laevis f. laevis,およびアメリカ産のP. laevis f. polymorpha)を異なる塩濃度条件下で培養し,形成された被殻を観察した。その結果,いずれの株も,塩濃度に応じて眼域の突出しない被殻(laevis型)と突出した被殻(polymorpha型)の両方を形成できることが分かった。さらに,その形態を分ける塩濃度の境界はいずれの株でも2‰~7‰の間に存在しており,形態の変化は可塑的であった。数‰のわずかな塩濃度操作によって細胞壁形態を明瞭に変化させることができるという特徴は,珪藻の形態形成研究において有用である可能性がある。そこで、次に珪藻の立体的な形態の決定に関与する遺伝子を見出すことを目的とし、塩分2‰および7‰で培養したP. laevis を用いて比較トランスクリプトーム解析を行った。その結果、計7,899の遺伝子の発現が検出され、うち1,913の遺伝子において両塩分条件間における発現変動がみられた。発現変動遺伝子には、トランスポゾン、オスモライト合成経路、膜輸送、細胞骨格にかかわる遺伝子などを含んでいた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞壁の形態可塑性を誘発する塩濃度を明らかにするため、計画当初より多い各種培養実験を行い、より厳密な検証を行った。また観察された現象の一般性を検証するため、実験共試株として採集地点の異なる3株を加え、それら全てについて前述の培養実験を行った。この結果、初年度前半の進捗状況には若干の遅れがあったものの、その後予定されていた比較トランスクリプトーム解析については想定よりも順調な進捗がみられたため、全体的には計画通りに進んでいるといえる。

今後の研究の推進方策

トランスクリプトームの結果は、数‰とはいえ塩濃度の違いがストレスとなっている可能性を示唆していた。今後、公共データベースで公開されている各種塩分応答トランスクリプトームデータとの比較解析を通じて、得られた発現変動遺伝子のうち塩分ストレス応答に直接関連している情報を除き、形態変異に直結した情報をあぶりだすための情報解析を進める。また、細胞の塩分応答をより詳細に理解するため、初年度に各塩分条件下におけるメタボロームを取得済みである。今後はトランスクリプトーム解析に加え、メタボロームデータの比較解析も併せて行い、多角的視点から細胞壁形態の可塑性という現象に迫る。

次年度使用額が生じた理由

初年度に予定されていた遺伝子導入実験を次年度へと変更し、より緊急性の高いメタボローム解析の委託解析を行ったため、その差額により次年度使用額が増加した。次年度は当該差額を使用して、計画通り遺伝子導入を実施する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 珪藻Pleurosira laevisにおける塩濃度に依存したシリカ細胞壁形態の可塑的変化2020

    • 著者名/発表者名
      鎌倉史帆, 出井雅彦, 佐藤晋也
    • 学会等名
      日本藻類学会第45回大会

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公開日: 2021-12-27  

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