研究課題
血球は,特定の臓器(造血器)に存在する造血幹/前駆細胞(HSPC)から様々な刺激を受けて増殖,分化し,末梢循環へ移行する。ヒトの血球産生(造血)は,胎生期に卵黄嚢から始まり,発生が進むと肝臓,脾臓に変わり,出生後に骨髄に移行する。しかし脊椎動物を広く見渡すと,血球を造り出す造血器は動物種毎に異なる。例えば魚類の造血器は腎臓である。それらに対して本研究対象とする無尾両生類ツメガエル(ゼノパス)の成体の造血は,肝臓,脾臓,骨髄の複数の臓器が分担して末梢血球を産生している。興味深いことに,肝臓では赤血球,白血球,栓球(哺乳類の血小板の機能を担う細胞)の全てを産生するが,脾臓や骨髄では主に栓球,白血球を産生する。すなわち赤血球,白血球,栓球はいずれもHSPCが起源であると考えられるが,造血器によって産生する血球の種類が異なる。このようにツメガエルの各々の造血器が異なる血球種を産生するのは,各造血器のHSPCの性質あるいは造血の組織環境の違いによるものなのだろうか?この課題は基礎生物学的にも,医科学への応用面でも大変興味深い。本研究はツメガエル成体のHSPCの特性の解明と分離法を確立し,各々造血器に存在するHHSPCの性質の違いを明らかにすることを目指す。その解析を通じて,ツメガエルの複数の造血器の使い分けあるいは役割分担について明らかにすることができる。本研究の第2年度にはアフリカツメガエル成体の肝臓よりHSPCを含む細胞集団の分離方法をほぼ確立した。第3年度ではHSPC候補集団の分離条件の再現性をさらに厳しく追及した。そして肝臓より得られたHSPC候補細胞集団の特性を明らかにするために遺伝子発現の分析を実施したところ,他の細胞集団とは異なる遺伝子群の発現を認めた。これらの遺伝子群について,ヒトやマウスで報告された幹細胞性を示す遺伝子との照合を進めることになった。
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Development, Growth & Differentiation
巻: 65 ページ: 94-99
10.1111/dgd.12837
巻: 64 ページ: 362-367
10.1111/dgd.12803
http://www.f.waseda.jp/tkato/publ/publ-top.html
https://waseda.elsevierpure.com/en/persons/takashi-kato