研究課題/領域番号 |
20K06730
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
太田 啓介 久留米大学, 医学部, 教授 (00258401)
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研究分担者 |
広重 佑 久留米大学, 医学部, 助教 (50647782)
都合 亜記暢 久留米大学, 医学部, 技能職員 (80569517)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / リン酸化 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは細胞の種類によって様々な独特の形を持っているが、その形がどの様に維持され、どの様にコントロールされているのかは明らかではない。また、これまでに、我々はカンナビノイド受容体をノックアウトしたマウス海馬の神経細胞を解析した際(Kataoka,2020)や、未発表ではあるものの、あるmiRNAのノックアウトを行った際も、その形態が3次元的に大きく変化していることを確かめている。つまり、ミトコンドリアの形は、細胞の機能や状態により厳密にコントロールされていることを示唆している。現在、ミトコンドリアの形態変化はFission-Fusionの調節系として説明され、断片化と網状の間の形態変化の分子機構が積極的に解析されている。しかし我々は、ミトコンドリアの膜電位低下をきっかけとして、Fission-Fusionとは別の形態変化がもたらされることを明らかにしてきた(Miyazono,2018)。すなわち、ミトコンドリアの膜電位低下後に起こる形態変化が、表面張力のみに依存して起こることを明らかにした。つまり、膜電位低下後に形態維持に関わる機構が障害され、支えを失ったミトコンドリアが形態変化したと考えられるわけである。我々は、この過程が特定のタンパクのリン酸化・脱リン酸化によって制御されていると考え、その責任分子を同定することを本研究の最終目標とした。現在比較的標的が広いキナーゼ阻害剤およびフォスファターゼ阻害剤で前処理することで、膜電位低下処理によるミトコンドリアの形態変化に影響を与えるデータが得られている。 ミトコンドリアの形は細胞代謝と関わることが示唆されているが、現在はその根拠が不明であるため、診断に使われることは稀である。しかしこの機構が明らかになることで、ミトコンドリア形態の変化がどのような意味を持つのか、新しい診断材料の一つにつながる考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画としては概ね予定通りであるものの、コロナウイルス感染症対応において研究代表者及び大学院生/技術職員の十分な研究時間の確保できなかったこと、 また、リン酸化・脱リン酸化阻害による影響が、CCCP処理後の細胞の形態変化に対し、全か無かのような明確な変化ではないが、CCCP処理後の細胞の形態変化という過程自体が、培養液・室内の温度条件により影響されることがわかり、より厳密な定量解析が必須であることが明らかとなったため、安定性と再現性を確保する対策に時間を要したため、今年度予定していた、阻害剤による関連遺伝子の絞り込みが十分には進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸化・脱リン酸化阻害の影響による定量解析部分は、従来のLive -imagingのようなダイナミクスを解析する方法論に変えて、温度管理を厳密に行った実験系の確立を行い対応している。その上で、必要な際に、ライブイメージングを行う方向で修正し、実験を再スタートしている。阻害剤についても、順次、標的が広いキナーゼ阻害剤およびフォスファターゼ阻害剤からより標的の狭い薬剤へと進めていき、今年度前半より、遺伝子の絞り込みを行いsiRNAによるスクリーニングに入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、COVID19対応による実験の遅れ、及び、実験系の定量解析精度を高める必要性から、阻害剤による候補絞り込みが十分進まなかった。計画書では、この絞り込みを年度後半に行い、年度末にはsiRNAの候補選択を行い関連試薬を発注、年度末から次年度にかけて、解析を行う予定であった。しかし、前述のように、候補絞り込みが遅れたため、計画通りに支出が進まなかったことが次年度使用学が生じた最大の理由である。現在、定量解析の目処が立っており、絞り込みのための阻害剤は順次進めいる。したがって、次年度早々にsiRNAの候補を選び、ノックダウン実験での検討が開始できる予定である。
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