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2020 年度 実施状況報告書

嗅覚並行処理経路の統合様式の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06732
研究機関北海道大学

研究代表者

西野 浩史  北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (80332477)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード投射ニューロン / キノコ体 / 昆虫 / 並行経路 / ゴキブリ / γ葉 / 層構造 / 前大脳側葉
研究実績の概要

嗅覚の発達した動物では一次嗅覚中枢から高次中枢へ投射するニューロンが複数の並行経路を形成する。しかし、並行経路で処理される情報が高次嗅覚中枢でどう統合処理され、ひとつの行動出力へと結びつくのかは理解されていない。
嗅覚の発達したワモンゴキブリは嗅感覚ニューロンから糸球体を経て記憶中枢(キノコ体)に至るまで明瞭に分かれた2本の並行経路を持つ。キノコ体の葉部の非γ層は触角葉奥にある大きな糸球体から出力するType1投射ニューロンの情報を優先的に処理し、γ層は触角葉表面にある小さな糸球体から出力するType2投射ニューロンの情報を優先的に処理する。本研究の目的は、キノコ体の葉部における機能構築を単一ニューロンレベルで精査することで、並列経路の機能的意義を理解することを目標とする。
2020年度は当初計画通り、垂直葉の直線部分約200マイクロメートルの領域に記録電極をピンポイントで刺入し、細胞内記録・染色を行った。その結果、非γ層とγ層から出力するニューロンの生理学的性質やその形態は大きく異なっていること、両経路は少なくとも行動出力の企画に関わる前大脳側葉に至るまでは分離されていることがわかった。また、葉部に入力し、その活動を修飾すると思われるニューロンの多くはγ層と非γ層の両方を支配しており、入出力部位が混在していること、規則的かつ持続的な活動を示すことを明らかにした。また、脳の水平切片を作成することにより、ニューロンの入出力部位の判別を容易に行えることを確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画通り、垂直葉の直線部分に的を絞り、細胞内記録を行ったが、記録される大多数のニューロンは非γ層からの出力ニューロンであった。γ層への入出力ニューロンからの記録は脳表面に位置しており、しかも小さいことから困難を極めた。それでもγ層から出力するニューロンからの記録・染色に数例成功し、概ねType2投射ニューロンの発火や応答の特徴を反映していること、非γ層の出力ニューロンとは大きく異なる形態を持つことを明らかにした。また、樹状突起や軸索終末の分布は水平切片を作成することで容易に評価できることがわかり、記録部位の生理学的性質から推定される入出力部位と良く合致することがわかった。以上、研究初年度の到達目標であったγ葉の出力ニューロンの生理学的特徴、形態を明らかにすることができ、次年度以降の研究に弾みのつく成果を得た。

今後の研究の推進方策

研究2年目後半以降は、対象を水平葉にも拡げつつ、葉部全体の機能構築について調べる。自発発火、多種感覚刺激に対する応答特性、入出力部位、伝達物質について部域ごとの特徴を調べるとともに、ショウジョウバエの葉部の機能構築との共通性・相違点を比較する。とくに、γ層、非γ層のみから出力するニューロンの前大脳側葉への投射パターン、γ層と非γ層の情報統合に寄与するニューロンの形態や生理学的特徴に特段の注意を払う。葉部から出力するニューロンの中にノンスパイキングニューロンが存在するのかどうかについても精査していきたい。

次年度使用額が生じた理由

当初計画では国内学会で2回発表予定であったが、札幌市や北海道大学独自の感染防止の取り組みのために、移動を控える状況が生じたこと、実験昆虫の支払いを別財源から行ったことで、約30万円程度の次年度繰り越し金が生じた。この繰り越し金はデータ解析、図作成用のPC1点の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 匂いのかたちを把握する昆虫2021

    • 著者名/発表者名
      西野浩史
    • 雑誌名

      ファルマシア

      巻: 57 ページ: 180-184

    • DOI

      10.14894/faruawpsj.57.3_180

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Management of flying inasects on expressways through an academic-industrial collaboration: evaluation of the effect of light wavelengths and meteorological factors on insect attraction2020

    • 著者名/発表者名
      M. Komatsu, K. Kurihara, S. Saito, M. Domae, N. Masuya, Y. Shimura, S. Kajiyama Y. Kanda, K. Sugisaki, K. Ebina, O. Ikeda, Y. Moriwaki, N. Atsumi, K. Abe, T. Maruyama, S. Watanabe, H. Nishino
    • 雑誌名

      Zoological Letters

      巻: 6 ページ: 1-15

    • DOI

      10.1186/s40851-020-00163-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ワモンゴキブリの嗅覚共受容体(Orco)の同定と機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      立石康介、渡邊崇之、西野浩史、水波誠、渡邉英博
    • 学会等名
      第65回日本応用動物昆虫学会大会
  • [学会発表] 振動によるクビアカツヤカミキリの行動制御機構ー成虫・幼虫の室内実験2021

    • 著者名/発表者名
      高梨琢磨、衣浦晴生、上地奈美、西野浩史、浦野忠久、加賀谷悦子、田村繁明,蔭山健介
    • 学会等名
      第65回日本応用動物昆虫学会
  • [学会発表] 微小感覚器官の高分解能可視化による化石ゴキブリの生態復元2021

    • 著者名/発表者名
      谷口諒、西野浩史、伊庭靖弘
    • 学会等名
      第170回日本古生物学会例会
  • [図書] Tonic immobilty in a cricket: behavioral characteristics, neural substrate, and functional significance in Death-feigning in Insects: mechanism and function of tonic immobility2021

    • 著者名/発表者名
      H. Nishino, M. Sakai
    • 総ページ数
      189
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9813365978
  • [図書] Tonic immobility in a cricket: neuronal underpinnings of global motor inhibition in Death-feigning in insects: mechanism and function of tonic immobility2021

    • 著者名/発表者名
      H. Nishino
    • 総ページ数
      189
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9813365978
  • [図書] バイオミメティクス・エコミメティクス -持続可能な循環型社会へ導く技術革新のヒント- 第III編第4章 生物の世界観:昆虫の振動・音受容とバイオミメティクス2020

    • 著者名/発表者名
      西野浩史
    • 総ページ数
      367
    • 出版者
      シーエムシー出版
    • ISBN
      978-4-7813-1563-8
  • [備考] Nishino Lab1

    • URL

      https://www.youtube.com/channel/UCyPUBf6ysfnljNjdt-ebPxQ

  • [備考] 西野研究室

    • URL

      http://www.es.hokudai.ac.jp/labo/nishino/

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公開日: 2021-12-27  

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