研究実績の概要 |
エダアシクラゲには、暗期の後の明刺激に反応して配偶子放出(放卵・放精)に至る「明タイプ」と、その逆の、明期の後の暗刺激によって配偶子を放出する「暗タイプ」が存在する。また、青森県青森市浅虫で採集された明タイプと宮城県塩竈市浦戸野々島で採集された暗タイプを掛け合わせてできた「F1ハイブリッド個体」は、明タイプと暗タイプの中間的な形質を示すことが分かっている。今回、明タイプ、暗タイプ、F1ハイブリッドのそれぞれメス系統の個体から卵巣のみを集め、トランスクリプトーム解析を行い、発現しているオプシンを探索した。その結果、明タイプの卵巣からは3種類(CpLop1, CpLop2, CpLop3)、暗タイプの卵巣からは4種類のオプシン(CpDop1, CpDop2, CpDop3, CpDop4)を見つけることができた。また、F1ハイブリッドの卵巣には、明タイプと暗タイプの双方のオプシン7種類すべてが発現していることが確認された。既知の動物オプシンの塩基配列との比較を行ったところ、エダアシクラゲの卵巣で発現している7種類のオプシンは、いずれも「刺胞動物Gs型」に分類された。すなわち、cAMPを上昇させるGs型Gタンパク質と共役していることが予想される。それぞれのオプシンの機能を阻害した際に明刺激や暗刺激への応答がどのように変化するかを調べるため、明タイプおよび暗タイプのゲノム解析を進めるとともに、CRISPR-Cas9によるノックアウト個体の作出を目指し、ガイドRNAの設計に取り掛かっている。
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