研究実績の概要 |
桿体様の特性をもつ錐体オプシンが錐体視細胞の生理機能に及ぼす影響を検証する目的で、マウス緑錐体オプシン(mGr)の200番目のプロリン残基がイソロイシン残基に置換されたノックイン(KI)マウスをiGONAD法により作製した。前年度に作製したKIマウスのmGr遺伝子転写産物はスプライシング異常により異常なmRNAが生成されていた。本年度は、イソロイシン残基をコードする他の縮重配列(ATC, ATT, ATA)に改変された3系統のKIマウスを確立した。RT-PCRにより網膜におけるマウス緑錐体オプシンの転写産物を調べたところ、3系統のKIマウスにおいても生型と同じ長さのmRNAが生成されていた。網膜電図(ERG)解析により暗順応させたマウスの光応答を測定した。フリッカー光による刺激に対しても、3系統のKIマウスでは光応答が観察されたことから錐体細胞系は機能していると考えられた。さらに、KIマウスを桿体トランスデューシン(Gnat1)ノックアウトマウスと交配し桿体が光応答を示さない系統を作出した。現在、この系統を用いてERGや単一細胞記録により錐体機能の解析を行っている。 また、mGr遺伝子座にロドプシン遺伝子の導入を試みたが組換え体は得られなかった。 さらに、ロドプシンの189番目のイソロイシン残基をプロリン残基に置換したKIマウスを作製し、ERGにより光応答を測定した。ERGのa波およびb波の最大応答は野生型と同様であったのに対して、光感度は野生型に対して低下の傾向を示した。また、吸引電極法による単一視細胞の測定を行ったところ、KIマウスは野生型に対して光感度の低下が観察された。
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