研究課題/領域番号 |
20K06739
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱中 良隆 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10647572)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光周性 / 軟体動物 / Caudo-dorsal cell |
研究実績の概要 |
淡水産の巻貝であるヨーロッパモノアラガイは産卵行動に明瞭な光周性を示す。本種の産卵行動は長日で促進され、産卵は脳神経節にある神経分泌細胞caudo-dorsal cell (CDC) が合成する排卵ホルモンCDC hormone (CDCH) の分泌によって起こる。このCDCの活動は日長によって調節されており、長日飼育個体のCDCは短日飼育個体のCDCよりも興奮性が高くなることが申請者らの研究で明らかにされている (Hamanaka and Shiga, 投稿中)。この光周期依存的なCDCの興奮性の差を生み出すニューロンは何なのか?1年目は、CDCに発現する神経伝達物質の受容体遺伝子を単一細胞レベルのRNA sequencingで同定することで、CDCの興奮性の切り替えに重要な伝達物質を解明しようと考えた。しかしながら、未だ単一CDCの単離と回収方法の確立に至っていない。そこで、まずCDCを含む中枢神経系 (CNS) に発現するmRNAライブラリーの作成に着手した。mRNAの抽出には、長日あるいは短日飼育個体のCNSを用いた。これによって、CNS内に発現する遺伝子群のデータセットの取得に成功した。今後は、コンピューターによる発現量解析を通して、光周期によって発現量が変る(受容体)遺伝子の存在を明らかにし、光周期依存的な産卵行動との関連性を明らかにしたい。さらに、引き続き、単一CDCのRNA sequencing法の確立に取り組み、CDCに発現する受容体遺伝子の同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヨーロッパモノアラガイの成長は非常に緩やかで、実験に必要な成熟個体を得るまでに5~6か月の長い期間を要する。昨年の大阪府内での緊急事態宣言の発出に伴い、研究室内での実験動物の飼育と維持を最小限にとどめる必要があった。そのため、実験に使用する十分な個体の確保ができず、実験開始の延期と規模の縮小をせざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、単一CDCのRNA sequencing法の確立に取り組み、CDCに発現する神経伝達物質の受容体遺伝子の同定を行う。単細胞でのRNA sequencing が困難な場合は、CDCの細胞クラスターを対象とした方法に切り替える。これにより、CDCの活動を制御する神経伝達物質候補が明らかとなる。続いて、候補となる神経伝達物質を発現するニューロンを免疫組織化学法によって形態学的に同定する。加えて、CDCニューロンとの二重標識により、両者の接続関係を詳細に解析し、機能的な神経連絡の有無を検討する。以上により、光周期依存的なCDCの興奮性の切り替えに関わる上流ニューロンが明らかになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目に予定していた単一CDCのRNAsequencingを2年目に行うことにしたため。
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