研究課題/領域番号 |
20K06744
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
冨田 淳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (40432231)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 睡眠覚醒 / ショウジョウバエ / 中心複合体 / ドーパミン / NMDA受容体 / 生物発光 |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエの睡眠-覚醒を制御する中心複合体PB(protocerebral bridge)の神経回路の解析結果を論文発表した(Tomita et al., Front. Neurosci., 2021)。この神経回路は、覚醒を促進するPB-FB-NOニューロン群とT1ドーパミンニューロン群、睡眠を促進するPB介在ニューロン群から構成される。PB介在ニューロン群がPB-FB-NOニューロン群を抑制することで睡眠を促進し、T1ニューロン群がD2受容体シグナルを介してPB介在ニューロン群を抑制することで、覚醒を促進することが示唆された。 また、これまでの研究で、PB介在ニューロン群はNMDA受容体シグナルによっても制御され、睡眠-覚醒制御に関わることが示唆された。そこで、このニューロン群における細胞内[Ca2+]の変化とNMDA受容体シグナルおよび睡眠要求との関連を調べることにしたが、PB介在ニューロン群のGal4ドライバー系統は、視小葉板に強く発現するため、ルシフェラーゼレポーターシステムを用いた自由行動下での細胞内[Ca2+]の変化の測定に使用することができなかった。しかし、今回の論文発表のために追加で行った実験で、視小葉板での発現は非常に弱く、睡眠を促進するPB介在ニューロン群をラベルする別のドライバー系統を見出すことができた。今後、これら2種類のドライバー系統を利用してPB介在ニューロンを特異的にラベルするSplit-Gal4系統を作製し、研究を進める予定である。 生物発光測定系の準備も行った。睡眠-覚醒制御に関わることが報告されているニューロン群に、TRIC(Transcriptional Reporter of Intracellular Ca2+)(Gao et al., 2015)を発現させて、数日間、発光測定が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、脳のある神経細胞群におけるNMDA受容体-カルシニューリンシグナルが睡眠要求と相関する可能性を示し、その神経細胞群を特異的にラベルするためのGal4ドライバー系統の候補を見出した。これらのドライバー系統を用いてルシフェラーゼレポーターシステム(CaLexA-LUC)を駆動させるために必要なLexAop2-luciferase系統を作製中である。本年度は、睡眠を促進するPB介在ニューロン群を新たな解析対象として加えることができた。このニューロン群を特異的にラベルするためのSplit-Gal4系統の作製を準備している。生物発光測定系の準備もできたが、まだ、標的神経細胞群における細胞内[Ca2+]変化の測定に至っていないため、進捗状況については、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
LexAop2-luciferase系統およびPB介在ニューロン群のSplit-Gal4系統を作製し、標的神経細胞群における細胞内[Ca2+]変化を測定する。標的神経細胞群でNMDA受容体をノックダウンすることで、観察された細胞内[Ca2+]変化がNMDA受容体を介したものかどうかを評価する。また、生物発光測定系に機械刺激装置を組み込むことで断眠を行い、断眠直後およびリバウンド睡眠後のルシフェラーゼ活性を測定することで、睡眠要求の測定ができていることを確認する。
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