研究実績の概要 |
今年度は、まず生物発光測定の条件検討を行った。睡眠-覚醒制御に関わるニューロン群をラベルするQF2ドライバー系統(R20A02-QF2)(Kunst et al., 2014)を用いて、Transcriptional Reporter of Intracellular Ca2+(TRIC)(Gao et al., 2015)を発現させた。 このショウジョウバエを12時間ずつの明暗サイクルに同調させた後、10 mM ルシフェリンを含む餌を入れた管に移し、生物発光を1分間毎に3日間測定した。発光強度には、活動量が多い主観的昼に上昇し、睡眠量が多い主観的夜に低下する傾向がみられた。また、生物発光の測定中に機械刺激を与えて断眠するための装置の作製も行った。 本研究での解析対象となる神経細胞群を特異的にラベルするGal4ドライバー系統の探索も引き続き行い、概日時計ニューロンの一つである背側側方ニューロンを比較的特異的にラベルする1系統を新たに見出した。 本研究では、ショウジョウバエの睡眠-覚醒制御に関わる中心複合体PB(protocerebral bridge)の神経回路を解析し、論文発表した(Tomita et al., Front. Neurosci., 2021)。この神経回路では、PB介在ニューロン群がPB-FB-NOニューロン群を抑制することで睡眠を促進し、一方、T1ドーパミンニューロン群がD2受容体シグナルを介してPB介在ニューロン群を抑制することで、覚醒を促進することが示唆された。また、PB介在ニューロン群は睡眠-覚醒制御において、NMDA受容体シグナルによっても制御されることが示唆された。現在、PB介在ニューロン群の細胞内[Ca2+]の変化と睡眠要求との関連を調べるために、研究を進めている。
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