研究課題
(1)チャネル型nAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御腸幹細胞の分化・増殖を促進するチャネル型ニコチン性ACh受容体(nAChRs)のサブタイプがα2β4であることを報告した(Takahashi et al. Int. J. Mol. Sci. (2018) 19:E738)。そこで、次にサブユニット(α2及びβ4)のノックインマウス(KIマウス)の作製に着手した(研究協力者の岐阜大・医・大沢匡毅教授が担当)。その過程で、β4-KIキメラマウスの解析を行ったところ、予想通リ、β4-KIマウスのクリプトサイズの減少が見られた。このクリプトサイズの減少は、小腸の上皮細胞の1つであるパネート細胞を介した腸幹細胞の制御であり、その制御はHippo-Notchシグナル伝達経路によることを明らかにした(Takahashi et al. Int. Immunopharmacol. (2020) 88:106984)。(2)代謝型mAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御代謝型ムスカリン性ACh受容体(mAChRs)のサブタイプの1つであるM3のノックアウトマウス(KOマウス)の解析を行った結果、M3-KOマウスのクリプトサイズが野生型マウス(WTマウス)に比べて増大していることを突き止めた。このクリプトサイズの増大は、M3シグナルの下流域で、EphB/ephrin-Bシグナル伝達経路とMAPK/ERKシグナル伝達経路が活性化されていることを見出した。このことは、M3-KOマウスのクリプトサイズの増大は、腸幹細胞と未分化細胞の増殖が促進されているとともに、EphB/ephrin-Bファミリー分子の濃度勾配が変動しているためであると結論付けた。現在、EMBO J.の姉妹誌に論文を投稿中である(投稿先:Life Sci. Alliance)。
2: おおむね順調に進展している
(1)チャネル型nAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御サブユニット(α2及びβ4)のノックインマウス(KIマウス)の作製の過程で、α2及びβ4遺伝子の下流域にIRES-mClover3をつなげたKIマウスを作出し、各々のKIマウス小腸におけるmClover3の局在を調べた、その結果、mClover3タンパク質はクリプト底部に局在し、局在する細胞はパネート細胞であることを見出した。すなわち、チャネル型nAChRのサブタイプα2β4がパネート細胞に局在していることを示す新たな成果である。さらに、β4-KIキメラマウスの解析を行ったところ、予想通リ、β4-KIマウスのクリプトサイズの減少が見られた。このクリプトサイズの減少は、パネート細胞を介した腸幹細胞の制御であり、その制御はHippo-Notchシグナル伝達経路によることが示唆された(Takahashi et al. Int. Immunopharmacol. (2020) 88:106984)。(2)代謝型mAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御代謝型M3-KOマウスの解析結果から得られた成果について、現在、EMBO J.の姉妹誌に論文を投稿中である(投稿先:Life Sci. Alliance)。(3)代謝型mAChRsとチャネル型nAChRsとの機能的相互作用の解析これまでに、代謝型mAChR-M3のKOマウスでは、他の代謝型mAChRs の遺伝子発現変動は見られていない。また、代謝型mAChR-M3のKOマウスのクリプトでは、RNA-Seq解析により、チャネル型nAChRサブユニットのβ4の遺伝子発現が上昇していることを見出している。このことから、代謝型mAChR-M3(分化・増殖抑制)とチャネル型nAChR-β4(分化・増殖促進)を介したAChの拮抗作用による腸幹細胞の制御が考えられた。
(1)チャネル型nAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御チャネル型nAChRsサブタイプα2β4のサブユニット(α2及びβ4)のKIマウスを作出し、完全にノックアウトすることによるクリプトサイズの減少の原因を、細胞の分化・増殖、位置情報などについて詳しく調べる。また、チャネル型nAChR(α2β4)→Hippo/Notchシグナル伝達経路を介した腸幹細胞の制御の作業仮説を検証する。(2)代謝型mAChRsを介した非神経性AChの幹細胞制御代謝型mAChR-M3のKOマウス解析の成果を現在投稿中である。M3-KOマウスのクリプトで過剰に発現しているEphB/ephrin-Bシグナルを、EphB2及びephrin-B2のキメラタンパク質のin vivo投与によるレスキュー実験を行う。可視化したM3-KIマウス(M3-mClover3マウス)とephrin-B2-KOマウスの作出を行い、M3を発現している細胞の同定と追跡、そしてレスキュー実験と並行してephrin-B2-KOマウスの解析に着手する。(3)代謝型mAChRsとチャネル型nAChRsとの機能的相互作用の解析代謝型mAChR-M3(分化・増殖抑制)とチャネル型nAChR-α2β4(分化・増殖促進)を介したAChの拮抗作用による腸幹細胞の制御が考えられるので、代謝型mAChR-M3とチャネル型nAChRサブユニット(α2及びβ4)に絞って機能的相互作用の解析を進める。具体的には、代謝型mAChR-M3サブタイプとチャネル型nAChR-α2β4サブタイプのα2またはβ4サブユニットのダブルKOマウスの作出に着手する。胎生致死または発育不全の場合は、それぞれの受容体に特異的なアンタゴニストを用いて、オルガノイド培養系のin vitro 薬理実験を行う。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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