研究課題/領域番号 |
20K06753
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
松野 元美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 主席研究員 (90392365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 加齢性記憶障害 / ドーパミン / 記憶痕跡細胞 |
研究実績の概要 |
本年度は、「記憶固定時に回収できなかったグルタミン酸によるDA神経細胞の活動上昇が、加齢体の記憶汎化の原因である」という仮説についてさらに検証を加えた。(1) 加齢体では学習により形成された記憶痕跡細胞が学習後、正常に維持されることを示した。(2)加齢体で生じる、記憶読み出し時の記憶痕跡細胞の非特異的な活性化は学習後のグルタミン酸シグナルを抑制することでレスキューされることを示した。(3)学習後に活性化すべきグルタミン酸トランスポーターが機能しないことが、過剰なグルタミン酸による記憶汎化の原因となることを薬理学、遺伝学を用いて示した。(4)加齢体ではDA神経が長期記憶学習により増加したグルタミン酸の影響を受ける。この時、DA神経細胞表面上のグルタミン酸レベルの増加だけでなく、DA神経細胞のグルタミン酸受容体の発現量の増加もDA神経細胞の活動上昇に寄与していることをイメージング解析およびQPCRを用いて確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「記憶固定時に回収できなかったグルタミン酸によるDA神経細胞の活動上昇が、加齢体の記憶汎化の原因である」というモデルについてさらに検証を加えたため、記憶固定時の記憶痕跡細胞の活動変化については十分に検証できなかった。しかし、パイロット実験により、学習後の記憶痕跡細胞の活動異常が記憶汎化に必要であることを示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
記憶痕跡細胞の活動変化の計測を行い、記憶固定時の記憶痕跡細胞の同期活動/活動増加とその加齢による抑制という仮説を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
記憶固定時のグルタミン酸による固定DA神経細胞の活動上昇が、加齢体の記憶汎化の原因であるというモデルについて、検証を加える実験を優先させた事による。今後は記憶痕跡細胞の活動変化の計測を行い、記憶固定時の記憶痕跡細胞の同期活動/活動増加とその加齢による抑制という仮説を検証するための実験費用(試薬購入費)に充てる。
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