2021年度までにRMI1/RMI2 二重欠損が合成致死となること、さらにそこにBLM遺伝子を欠損させて三重欠損細胞を作製したことにより、BLMの欠損によってRMI1/RMI2の合成致死性が抑制されることを明らかにしていた。 これらのことからRMI1/RMI2の非存在化ではBLMの細胞に対して毒性を持つことが示唆された。そこでRMI1/RMI2二重欠損株において、逆にBLMを過剰に発現することによる細胞への影響を確認した。その結果、BLM過剰発現によって、細胞死が起こる割合や、染色体の断裂、染色体分配の異常などはさらに上昇した。またRMI1/RMI2非存在下ではBLMは間期に核内でfociを形成し、さらにこのfociはDNA二重鎖切断のマーカーであるganma-H2AXやRAD51と完全に共局在したことから、BLMによってDNA二重鎖切断が誘導されることが示された。次にRMI1/RMI2が存在している場合でもBLMが大過剰に存在すると細胞にとって悪影響があるのかどうかを確かめるため、野生株においてTet on systemを用いてBLMを一過的に過剰発現させた。その結果、細胞の増殖の大幅な低下が見られた。このことから本来BLMはゲノム安定性を担保する因子でありながら毒性を持つタンパク質であり、RMI1/RMI2はそのBLMの機能を調整することにより毒性を軽減していると考えられた。これらの結果はBLM症候群の成因を明らかにする上でも重要な結果であると考えられる。
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