研究課題/領域番号 |
20K06763
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
渡辺 絵理子 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20337405)
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研究分担者 |
渡邉 明彦 山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CRISP2 / アカハライモリ / 貯精 |
研究実績の概要 |
アカハライモリ輸精管特異的に発現する新規CRISP遺伝子の同定:アカハライモリ輸卵管RNAseqデータから得られたCRIPS2遺伝子断片の配列からプライマーを作成し、アカハライモリ輸精管から抽出したRNAを用いてRT-PCRを行い、輸精管で発現するCRISP2遺伝子断片の塩基配列を決定した。この配列を用いてRACE法を行い、これまでに知られているCRISP2遺伝子とは異なる配列を持つ新規遺伝子としてCRISP2v遺伝子およびCRISP2vS遺伝子を同定した。CRISP2vS遺伝子はion channel regulatory (ICR)ドメインを欠く、CRISP2v遺伝子のスプライシングバリアントである可能性が示唆されている。また、RNAseqデータを用いた解析を行い、アカハライモリCRISP2遺伝子は輸卵管をはじめとする複数の組織で発現するのに対し、CRISP2v遺伝子およびCRISP2vS遺伝子は輸精管特異的に発現することを明らかにした。さらに、CRISPタンパク質系統関係の解析から、CRISP2v、CRISP2vSおよびアカハライモリCRISP2は、ネッタイツメガエルのCRISP2とは異なるクラスターに属することを明らかにした。 CRISP2v遺伝子欠損アカハライモリの作成:ゲノムウォーキング法により決定したCRISP2vの59-89番目のアミノ酸をコードする塩基配列を含む領域から作成したガイドRNAをCas9タンパク質とともにアカハライモリ受精卵に注入した。幼生のゲノムDNAから標的領域を含むDNA断片をPCR増幅し、アガロースゲル電気泳動により変異導入個体を選別した。 抗体の作成:CRISP2vおよびCRISP2vSの共通の配列を持つ領域からCRIPS2に対する相同性が低い領域を選定し抗原ペプチドを合成、ウサギに免疫して抗血清を作成した。さらにプロテインGカラムを用いて抗CRISP2v抗血清より抗体を精製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アカハライモリの精巣特異的に発現する新規CRISP遺伝子としてCRISP2v遺伝子およびCRISP2vS遺伝子を同定した。また、CRISP2v遺伝子欠損アカハライモリ個体の作成に成功し、現在成生育中である。さらに、アカハライモリCRISP2vを認識する抗体の作成も終了しており、今後特異性の検証を行なった後にCRISP2vタンパク質発現領域の特定を行う予定である。なお、アカハライモリにおいて新規遺伝子が見つかったことから、ツメガエルで解析を行うCRISP遺伝子を改めて検討する必要が生じたため、CRISP遺伝子欠損ツメガエルの作成、ツメガエル CRISPに対する抗体の作成はCRISP遺伝子選定後に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CRISP2v遺伝子欠損アカハライモリの解析:2020年度に作成した個体からゲノムを抽出し、標的領域を含む領域の塩基配列を決定することにより、CRISP2v遺伝子に導入された変異を確定する。変異導入個体が性成熟後精子を採取し、自発的な先体反応率、精子の運動率および精子内のCa2+の局在に生じた変化を明らかにする。 CRISP遺伝子欠損ツメガエルの作成:輸精管で貯精を行うアカハライモリと異なり、アフリカツメガエルやネッタイツメガエルは精巣で貯精を行うことが示唆されている。 RNAseqデータ等を用いてツメガエル精巣で発現するCRISP遺伝子を同定する。さらに、Crisper-Cas9システムを用いてCRISP遺伝子欠損ツメガエルを作成する。変異が導入された個体が性成熟後精子を採取し、自発的な先体反応率、精子の運動率に生じた変化を明らかにする。 特異抗体を用いたCRISPの発現解析:成熟したアカハライモリの輸精管を摘出して可溶化し、精製した抗体を用いたイムノブロットにより得られるバンドの分子量等からCRISP2vに対する特異性を検証する。さらに輸精管の凍結切片を作成し、CRISP2vタンパク質が発現する組織、および細胞種を蛍光抗体染色により明らかにする。またツメガエル CRISPに対する抗体を作成し、精巣におけるCRISPの発現組織および発現細胞種を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染防止措置のため実験が実施できない時期が存在したため物品の購入時期が予定より先送りとなった。さらに、購入予定の物品の一部は新型コロナウィルス関連の検査等に用いられることから品薄となり、年度内の購入が不可能であった。 年度内に購入できなかった物品についても次年度に可能となり次第速やかに購入し、実験を遂行する予定である。
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