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2021 年度 実施状況報告書

精子貯蔵に関する輸精管の機能進化におけるCRISP2の役割

研究課題

研究課題/領域番号 20K06763
研究機関山形大学

研究代表者

渡辺 絵理子  山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20337405)

研究分担者 渡邉 明彦  山形大学, 理学部, 教授 (30250913)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードCrisp2 / アカハライモリ / 貯精
研究実績の概要

令和2年度に同定したアカハライモリ輸精管で発現するCrisp2であるCrisp2v およびCrisp2vsの精子貯蔵における役割を検証した。Crisp2vは細胞への結合に関与するCAPドメインおよびCa2+透過性チャネル開口に関わるICRドメインを持ち、Crisp2vs はICRドメインを持たないスプライシングバリアントである。貯蔵精子では細胞内Ca2+の局在を精子中片に維持することで受精におけるクオリティーが維持されることが示されている。今回、生殖期が始まる春に採集した個体では、細胞内Ca2+の局在が維持されている輸精管ほどCrisp2v遺伝子のCrisp2vs遺伝子に対する相対発現量が多いことを明らかにした。Crisp2vおよびCrisp2vsが標的分子に対して競合的な結合をすることによりCa2+透過性チャネル開口を量的に調節し、精子細胞内Ca2+局在維持に関与することが示唆された。
さらに、チャネル阻害剤等を用いた精子細胞内Ca2+局在維持に関わる細胞内信号伝達系の解析を行い、細胞外から流入したCa2+によるCaMの活性化および活性化されたCaM によるPMCA(plasma membrane Ca2+ ATPase)の活性化によるCa2+の排出が起こることが示唆された。特に受精時の精子においてはSMIS(sperm mortility initiating subustance)に応答してCav3.2よりCa2+が流入するメカニズムが存在することを明らかにした。さらに、CaMの活性化が強く阻害されるとシステインプロテアーゼであるcalpainがPMCAを不可逆的に活性化することが示唆された。Calpainのアポトーシスへの関与が示されていることから、輸精管中でクオリティーが保持できなくなった貯蔵精子をアポトーシスにより排除するメカニズムが存在する可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

Crispファミリータンパク質の系統解析の結果の検討を行い、アカハライモリCrisp2vおよびCrisp2vsは有尾類のCrispファミリータンパク質とのみクレードを形成することからCrisp2vおよびCrisp2vsは有尾類に特異的な機能を持つことが示唆されため、本研究の遂行においては有尾類であるアカハライモリを用いた解析が有効であり、無尾両生類のCrisp2遺伝子欠損個体の作成および発現解析は行う必要はないと判断した。
アカハライモリ輸精管において、スプライシングバリアントであるCrisp2vおよびCrisp2vsが標的分子に対して競合的な結合を行うことにより、精子の受精に関するクオリティー維持に必要となる細胞内Ca2+の中片への局在維持に関与することを示唆する結果を得た。さらに、精子細胞内Ca2+局在維持に関わる細胞内信号伝達系を明らかにした。
令和2年度に作成した抗体のCRISP2vに対する特異性を検証するために、アカハライモリ輸精管を可溶化し、精製した抗体を用いたイムノブロットを行なった。CRISP2vに相当する分子量を持つバンドは検出されなかったため、引き続きイムノブロットの条件の検討を検討する。
Crisp2v、およびCrisp2vの精子への結合の検証に用いることを目的とし、eGFP融合Crisp2v、およびCrisp2vの作成を行った。Crisp2v、またはCrisp2vsコーディング領域のC末端にGFP遺伝子を結合させた遺伝子を作成し、この遺伝子を組み込んだ発現ベクタープラスミドをCos-7細胞に導入した結果、Cos-7細胞におけるGFPの緑色蛍光が確認された。

今後の研究の推進方策

Crisp2v遺伝子欠損アカハライモリの解析:令和2年度に作成した個体からゲノムを抽出し、標的領域を含む領域の塩基配列を決定することにより、CRISP2v遺伝子に導入された変異を確定する。変異導入個体が性成熟後精子を採取し、自発的な先体反応率、精子の運動率および精子内のCa2+の局在に生じた変化を明らかにする。
特異抗体を用いたCRISPの発現解析:本年度に引き続きイムノブロットの条件の検討を検討し、得られるバンドの分子量等からCRISP2vに対する特異性を検証する。さらに輸精管の凍結切片を作成し、CRISP2vタンパク質が発現する組織、および細胞種を蛍光抗体染色により明らかにする。
Crisp2v、およびCrisp2vの精子への結合の検証:本年度作成したeGFP融合Crisp2v、およびCrisp2v を組み込んだCos-7細胞からeGFP融合Crisp2v、およびCrisp2v を精製し、eGFPの蛍光を指標としてCrisp2v、およびCrisp2vの精子への結合を検証する。

次年度使用額が生じた理由

利用した解析サービスのキャンペーンによる値引き、消費税等により端数が生じたため

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Differences of extracellular cues and Ca2+ permeable channels in the signaling pathways for inducing amphibian sperm motility.2021

    • 著者名/発表者名
      T. Sato, T. Arimura, K. Murata, M. Kawamura, W. Obama, M.Suzuki, Y. Nakauchi, A.Tominaga, M. Morita, K. Hiraoka, E. Takayama-Watanabe, A.Watanabe .
    • 雑誌名

      Zool. Sci.

      巻: 38 ページ: 343-351

    • DOI

      10.2108/zs200159

    • 査読あり
  • [学会発表] アカハライモリの精子機能調節における細胞内pH の関与に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      後藤小百合、高山ー渡辺絵理子、渡邉明彦
    • 学会等名
      日本動物学会2021年度東北支部大会
  • [学会発表] SMIS遺伝子の重複はイモリ科において起こった2021

    • 著者名/発表者名
      古川春佳、富永篤、高山-渡辺絵理子、渡邉明彦
    • 学会等名
      日本動物学会第92大会
  • [学会発表] アカハライモリ卵ジェリー層のpHは精子運動を活性化する2021

    • 著者名/発表者名
      後藤小百合、高山ー渡辺絵理子、渡邉明彦
    • 学会等名
      日本動物学会第92大会

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公開日: 2022-12-28  

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