研究課題/領域番号 |
20K06766
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
浜地 貴志 中央大学, 研究開発機構, 専任研究員 (10784556)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 有性生殖 / 進化発生学 / クラミドモナス / 緑藻 / ボルボックス / 転写因子 |
研究実績の概要 |
精子と卵という「性の二極化」は、後生動物や陸上植物を含む真核生物の広範な系統で、独立に出現したことから、進化生物学的に重要な問題であるといえる。この問題を解明するためのモデル系統群として、ボルボックス系列緑藻に着目した。全真核生物中でもボルボックス系列緑藻のみで、祖先的な同型配偶から、雌雄が二極化した異型配偶・卵生殖が、派生的・段階的に出現した過程が現存している。さらに、このボルボックス系列緑藻では、性決定のマスターレギュレータ転写因子としてMID遺伝子が保存されている。MIDタンパク質が発現すると同型配偶ではマイナス、異型配偶・卵生殖ではオスの配偶子が誘導され、MIDが存在しない場合はそれぞれプラス・メスとなることが判明していた。すなわち「ボルボックス系列緑藻の中で、MID下流で制御される遺伝子群がどのように変化したことが性の二極化を引き起こしたのか」を解明することが、 進化発生学的に最重要の問題となる。したがって、このMIDタンパク質がどのように下流の遺伝子発現を制御するか、ボルボックス系列緑藻の有性生殖・性分化を行う制御因子の機能解析と探索を進めた。MIDとは別に酵母ツーハイブリッド法で既に同定していたボルボックス系列緑藻性分化因子が、タンパク質間で相互作用する領域を、更に酵母ツーハイブリッド法によって同定することに成功した。この結果、プラス/メスとマイナス/オスで配偶子分化に必要な転写因子複合体コアに関する仮説を導出することが出来た。また、酵母ワンハイブリッド法によって、同型配偶クラミドモナスで、プラス・マイナス各々で性分化転写因子複合体によって発現制御されていると考えられる候補遺伝子のプロモーター領域に、複合体コアが相互作用するかどうかスクリーニングを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
酵母ツーハイブリッド法によって、性分化因子の機能ドメインを同定し、性分化転写因子複合体コアの仮説も洗練することができた。そしてさらに、酵母ワンハイブリッド法によって、性分化因子が相互作用する領域のスクリーニングも進めた。すなわち、計画した実験については、計画以上に進展させることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
米国ドナルド・ダンフォース植物科学センターのジム・ユーメン博士のチームとの共同研究で、性分化因子の欠損変異体と野生型とを有性生殖過程の進行において比較するトランスクリプトーム解析を進める。この結果で期待することができるのは、性分化因子の下流で制御される遺伝子群であり、言い換えれば、マイナス/プラスあるいは雌雄として分化した性を特徴づける遺伝子群そのものであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大に伴って参加を予定していた国際クラミドモナス学会が1年間延期となったため。
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