研究課題/領域番号 |
20K06768
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
児玉 有紀 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 准教授 (80582478)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミドリゾウリムシ / クロレラ / 細胞内共生 / モノクローナル抗体 / トリコシスト / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
繊毛虫のミドリゾウリムシの細胞質内には約700細胞の緑藻のクロレラが共生している。研究代表者らは繊毛虫のミドリゾウリムシとその共生クロレラ用いて、真核細胞同士の細胞内共生の成立は、次の4つのプロセスからなることを明らかにした。1クロレラが宿主食胞内でリソソーム消化酵素耐性を示す。2クロレラが食胞膜から細胞質中に遊離する。3クロレラを包む食胞膜が、リソソームが融合しないPV膜に分化する。4 PV膜に包まれたクロレラが宿主細胞表層直下へ定着する。本研究では、細胞生物学的および分子生物学的な手法を用いて、上記の4つのプロセスの分子機構を解明することを目的としている。さらにラマン分光法を用いて、PV膜分化に伴う分子構造の変化を明らかにする。本研究の発展は細胞内共生成立に普遍的な現象の分子機構の解明、細胞内共生関係の維持を通した生態系の維持と環境保全、細胞内共生による真核細胞の進化と多様化のメカニズムの解明等に繋がると期待される。
今年度は以下の結果を得た。 (1)共生クロレラは、宿主ミドリゾウリムシの細胞小器官の一種であるトリコシストと接着部位をめぐって競合している。トリコシストとクロレラの関係を調べるために、クロレラ除去株(白色株)と保持株(緑色株)のを数日間飢餓状態にし、ミドリゾウリムシ細胞に対する抗トリコシストモノクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法でトリコシストの数の変化を調べた。その結果、飢餓と暗闇の条件下で白色株トリコシスト数が、緑色株よりもはるかに速く減少することを示した。 (2)共生クロレラは宿主ミトコンドリアと PV 膜との 接着によって細胞表層直下に固定されている。共生の成立や維持における宿主ミトコンドリアの機能を調べるために、抗ミドリゾウリムシミトコンドリアモノクローナル抗体を使用して、白色株と緑色株の抗原の局在性を間接蛍光抗体法で比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した研究計画どおりに進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
HSP70や抗酸化作用をもつ Glutathione S-transferase などの、クロレラと共生前後のミドリゾウリムシにおいて重要な機能が予測されるタンパク質に対するポリクローナル抗体を約10種作製した。次年度はそれらの抗体を用いて、共生成立過程での抗原の消長と細胞内局在性を間接蛍光抗体法、イムノブロット、免疫電子顕微鏡法で調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で研究の開始が遅れたため。来年度、予定通りに試薬等を購入する。
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