研究実績の概要 |
令和4年度は以下の成果を得た。 (1) ミドリゾウリムシの共生クロレラは宿主ミトコンドリアとPV膜との接着によって細胞表層直下に固定されている。共生クロレラと宿主ミトコンドリアの相互作用の可能性を検討した。その結果、ミドリゾウリムシの細胞内にクロレラが共生すると、宿主ミドリゾウリムシのミトコンドリア数が減少し、その機能も低下することを抗ミトコンドリアモノクローナル抗体や透過型電子顕微鏡による観察など複数の方法で初めて証明した。また、クロレラが共生すると、ミトコンドリアの膜タンパク質濃度が低下するだけではなく、ミドリゾウリムシの細胞全体のタンパク質濃度も約1/2に低下することが分かった(Kodama and Fujishima, 2022)。
(2) クロレラを除去したミドリゾウリムシには、元の共生クロレラだけでなくfree-livingのクロレラも共生できることが知られている。2種のクロレラが宿主細胞内に共存できるかどうかを調べるために、クロレラを人為的に除去したミドリゾウリムシに2種のクロレラを同時に取り込ませた場合と、それぞれ1種のみを取り込ませた場合のミドリゾウリムシ細胞内での挙動を調べた。その結果、それぞれ単独で取り込ませた場合は、free-livingのクロレラよりも元の共生クロレラの共生率の方が約1.9倍高いことが明らかとなった。2種を共に混合した場合は、最終的には元の共生クロレラのみが残ることが明らかになった。さらに、ミドリゾウリムシへの共生適合性が高いものと低いものとで共生成立に至るまでの挙動が異なり、適合性の低いもの同士は同一の現象を示すことが示唆された(Kodama and Endoh, 投稿準備中)。
研究期間全体を通じて、クロレラのミドリゾウリムシへの再共生の成立に必須な次の4つのチェックポイントに関与する細胞生物学データを複数得ることができた。
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