研究課題/領域番号 |
20K06775
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中川 草 東海大学, 医学部, 准教授 (70510014)
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研究分担者 |
坂口 翔一 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (20815279)
宮沢 孝幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (80282705)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 内在性レトロウイルス / 新規遺伝子 / レトロトランスポゾン / 膜タンパク質 / 膜融合 / 進化モデル |
研究実績の概要 |
ウイルスゲノムが宿主ゲノムに水平伝播した配列(内在性ウイルス配列)が、宿主で機能遺伝子となった場合の進化の解明を行った。具体的には胎盤発生に重要な機能を果たすレトロウイルスの膜タンパク質由来の遺伝子を中心に解析した。レトロウイルスの膜タンパク質由来の遺伝子Syncytin-2はヒトを含めた旧世界ザルや新世界ザルにも共有される胎盤発生に寄与する遺伝子であると考えられていた。我々は新世界ザルのSyncytin-2の融合活性はヒトのものと比較して非常に弱いことを発見し、またいくつかの新世界ザルではナンセンス変異が入っているものを見つけた。したがって、Syncytin-2は新世界ザルのいくつかの種では胎盤発生に関与しているかもしれないが、別な膜タンパク質に由来するような遺伝子を独自に獲得している可能性があることを示した(Shoji et al. FEBS Open Bio 2023)。また、膜融合能をもつレトロウイルス由来の膜タンパク質が胎盤発生に寄与することが、さまざまな哺乳類、また胎盤様組織を持つ爬虫類でも示される。一方で、卵生の哺乳類である単孔類では、カモノハシでは膜タンパク質由来の配列が極めて少なかったために、胎盤を持たないことと関連があるのではないかと考えていた。近年、もう一種の単孔類であるハリモグラのゲノムが解読され、それらを合わせて解析した結果、ハリモグラのゲノムには400アミノ酸以上コードしている膜タンパク質由来の配列が121以上も存在することが分かった。また、そのうちの一つが膜融合能を持つことを実験的に証明した。胎盤という新奇形質の獲得と膜融合活性をもつウイルス由来の配列の獲得というのは単純な因果関係ではなく、必要条件なのかもしれないが、少なくとも十分条件ではないことを明らかにした(Kitao et al. MBE 2023)。
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