研究課題
本研究では、①共生系の維持とそれに関与する共生菌からの有機物を得るための相互作用について、及び、②その分子メカニズムを解明することを目標としている。これまでに、共生系として深海性の二枚貝シンカイヒバリガイを用いて、共生菌が細胞内共生する宿主のエラを用いて解析を進めた。宿主のエラ上皮細胞の食作用により環境中にいる共生菌を含む微生物を選択せずに細胞内に取り込み、共生菌以外の微生物は細胞内でリソソームにより分解される。しかし、共生菌は、消化されずに細胞内に維持されている可能性を見いだした。エラのトランスクリプトーム解析から食作用やリソソームに関する因子が発現しており、これらの因子のペプチド抗体を作成した。また、共生菌はメタンを取り込み、有機物を合成し、宿主に供給すると考えられたため、採取直後のシンカイヒバリガイに、気相に13C標識メタンを添加して飼育して、メタンが取り込まれ、どのような物質が作りだされるのか実験を行った。今年度は、作成した抗体を用いて組織切片を免疫染色し解析したところ、Rasスーパーファミリーに属する低分子量Gタンパク質であるRab9、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP1) 、マンノース6リン酸受容体(M6PR)、が共生菌を含む膜表面に局在していた。また細胞内の栄養や環境状況を感知するmTORC1も局在することがわかった。シンカイヒバリガイを13C標識メタン添加して飼育した個体のエラのアミノ酸の13Cラベルを解析したところ、いくつかのアミノ酸で13Cラベルが確認できた。これらの結果から、共生菌は環境中から食作用によって細胞内に取り込まれ、その後、分解されずに維持される。mTORC1は細胞内のアミノ酸を検知して活性化しリソソームに局在し、タンパク質合成などを制御していることが知られている。宿主のmTORC1が共生菌の維持に関与する可能性が示唆された。
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