最終年度においては昨年度より引き続いて鳥類ならびに魚類における鉤頭虫感染調査を中心に行った。その結果、本州および北海道のハシボソガラスから鉤頭虫を検出しDNA解析を行ったところ、昨年度までの調査で得られた両生類由来の鉤頭虫幼虫と一致した。この種は成虫の形態からSphaerirostris corvisと同定した。この種は核DNA配列を用いた系統解析からCentrorhynchus属に含めるべきであるとの議論がなされており、我々の解析でも同様の結果が得られた。また、ミトコンドリアDNA配列においてはS. picaeおよびS. lanceoidesと極めて近いことから、これらの種との異同ならびに宿主特異性の有無は今後慎重に調査を進める必要がある。本種の中間宿主として端脚類が考えられるため、北海道の淡水産ヨコエビを採集し鉤頭虫幼虫の検出を試みたが、発見には至らなかった。淡水魚の調査も継続して行ったが、得られた鉤頭虫幼虫は昨年度までの調査結果と同様にSouthwellina hipidaのみであった。 昨年度までの結果と合わせてCentrorhynchus属鉤頭虫3種(C. magnus、C. elongatus、C. corvis)のDNAバーコードを決定した。これを用いて、C. elongatusとC. corvisについては延長中間宿主が明らかとなった。また、S. hispidaについても鳥類と魚類からそれぞれ成虫と幼虫を検出した。今後、同様にDNAバーコーディングによる中間宿主の証明を行うことで、全てのライフサイクルを明らかにすることが可能となる。また、S. hispidaについてはミトコンドリアDNA配列を海外のものと比較すると別種レベルで異なっていることから、基産地が日本である本種の再記載論文を作成中である。
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