研究課題/領域番号 |
20K06784
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
北村 淳一 三重大学, 生物資源学研究科, リサーチフェロー (00432360)
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研究分担者 |
小北 智之 九州大学, 農学研究院, 教授 (60372835)
三品 達平 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40830162)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繁殖寄生 / 適応進化 / ニッチ分割 / 遺伝基盤 / タナゴ亜科魚類 / 繁殖生態 |
研究実績の概要 |
動物の繁殖寄生は巧妙な繁殖戦略の例として古くから自然史学的・生態学的関心を向けられてきた。宿主利用と関連して、祖先・近縁系統には認められない新奇的な形質獲得した系統は、このような鍵革新の後、新奇形質自体や様々な繁殖形質を適応進化させることにより繁殖ニッチを分化させ、種多様化してきたと想定される。それでは,このような繁殖ニッチ分化の背後にある形質群の適応的多様化はいったいどのような至近メカニズムによって達成されたのだろうか?本プロジェクトでは、淡水二枚貝類への繁殖寄生のため産卵管という新奇形質を獲得したタナゴ亜科魚類をモデル系として、鍵革新後の繁殖ニッチ分化の達成に大きく関与した雌繁殖形質を対象に、繁殖ニッチ分化の背後にある表現型セットの進化機構の全体像を描き出すことを目的としている。 令和3年度は、(1)令和2年度に引き続き、産卵管長分化のトランスクリプトーム基盤に焦点を当て産卵管における細胞外基質関連遺伝子群(特に令和3年度は、コラーゲンの安定性に関わる各種因子に着目して解析)の発現パターンを長産卵管種(キタノアカヒレタビラ)と短産卵管種(アカヒレタビラ)間でさらに詳細に比較した。その結果、前年度に提示された「産卵管長の種間変異に関与する分子機構に関する仮説」をさらに支持する成果が得られた。(2)顕著な卵形変異を示す亜種(シロヒレタビラとキタノアカヒレタビラ)を用いて、卵形変異の遺伝基盤を追究するためのQTL解析用の交雑家系の作出を行った。(3)春産卵型のイチモンジタナゴと秋産卵型のゼニタナゴを用いて、産卵時期変異の遺伝基盤を追究するための周年的なサンプリングを実施した。得られた血液・組織標本を用いた分析は令和4年度に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響で、令和3年度に実施予定していた項目が一部は実施できなかったが、それは令和4年4月から開始済みであり、令和4年度に充分挽回できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
野生生物を対象とした研究で、研究対象の充分な個体数の確保が一つのネックとなっていたが、これまでに採集した標本の蓄積、および、研究遂行上の個体数が充分確保できる種を新規に研究に加えたことで、今後の研究を加速させることが可能となった。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスと関連して、フィールド調査が実施できず、一部の実験材料が適切な時期(対象種の繁殖盛期)に入手できなかったため。これらの実験材料は令和4年度春期に確保する予定である。
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