今年度は、前年度発見されたカマアシムシ卵殻上の「すり鉢状構造」について、1.個体差の影響を排除すること、また、さらなる詳細な切片観察たのめに2.位置を特定することを目的に研究を行った。 まず、産下卵20個を用い、卵表の高解像度撮影および焦点合成を行った。 これらの卵のうち、4卵に直径10μmほどのサークル状の構造を観察することができた。 この構造をさらに詳細に検証するため、SEM観察を行った。カマアシムシ卵は微小かつ球形で、ランドマークとなる表面構造が卵前極以外に存在しないため、卵の外部形態観察からは卵の前後軸以外が判別できず、胚の位置を確認することによってのみ卵の背腹を判別することができる。以上の問題を解決するために、胚発生後期の卵を透過観察した上で、ランドマークの代替として穿孔を施しSEM観察を行った。以上のことにより、カマアシムシ卵において初めて極性の明らかなSEM観察像を得ることができた。この観察から、卵の背側には卵腹側と比較してより大きな突起が分布していることが明らかとなった。一方で、卵の側面および背面のSEM観察においては、生卵で観察されたリング状の構造を示唆するような表面構造は観察することができなかった。 また、卵門を染色できる可能性のあるクマシーブルー染色を発生後期卵に施し、観察を行ったところ、前極から背側にかけて強い発色がみられた。今後はクマシーブルーによる強い染色が見られた領域にさらに注目し、詳細な観察を行っていく。
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