研究課題/領域番号 |
20K06787
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福井 眞生子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (90635872)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カグヤカマアシムシ / 産雌単為生殖 / 卵形態 / 卵管 |
研究実績の概要 |
今年度は、アガロース培地を用いた飼育法を改良することにより、これまで材料としてきたモリカワカマアシムシに加え、新たにカグヤカマアシムシの累代飼育系の確立に成功した。カグヤカマアシムシは国内で雄の存在が知られておらず、単為生殖を行っている可能性が示唆されていた種であるが、単為生殖が実験的に証明された例は無い。 実験室内で確立したカグヤカマアシムシの累代飼育系から卵を採取し、孵化した幼虫を個別飼育したところ、観察した全ての個体が雌であり、その後多くの個体が単独で繁殖を行った。以上の事から、カグヤカマアシムシは産雌単為生殖を行っていること、すなわち、カグヤカマアシムシ卵は受精を経ずに孵化に至ることが明らかとなった。カグヤカマアシムシ卵の外部形態観察を行ったところ、モリカワカマアシムシでみられたようなすり鉢状の穴は観察されなかった。 このことは、モリカワカマアシムシでみられるすり鉢状の穴が、精子の侵入により形成されている可能性を示すものであり、六脚類の受精様式の原型を考える上で重要である。 また、カグヤカマアシムシの卵巣構造を組織学的に観察したところ、卵巣に一対の巨大な分泌腺が付属していることが明らかとなった。分泌腺はエオシン染色性の液体で満たされており、精子は確認されなかった。また、左右の分泌腺は後方で主輸卵管の両側方に接続していた。トビムシ目を含む六脚類では、貯精嚢など、卵管に付属する構造が普遍的にみられるが、カマアシムシ目で卵管の付属構造が発見されたのは初めてのことである。 今後は、モリカワカマアシムシにおいて孵化個体の個別飼育による検討を行い、交尾行動の観察や、卵管付属構造および受精様式の解明を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カマアシムシの受精様式の解明には、経時的な観察や個別飼育が不可欠であるが、これまでの素焼きの鉢を使用した飼育容器では、どちらも困難であった。今年度の成果であるカグヤカマアシムシの累代飼育系確立の過程で、培地上でのカマアシムシの個別飼育が可能となったことは、大きな前進と言える。 予備実験により、培地上での個別飼育や観察がモリカワカマアシムシにも適用可能であることが解っており、次年度の繁殖期において交尾や受精様式の解明が実現できることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
卵の形態観察に関し、これまで得られたデータを公開するため、論文作成を開始する。 また、今年度開発したアガロース培地による飼育法を活用した実験を開始する。具体的には、幼虫個体を多数個別飼育することにより、未交配の成虫を得る。用意した雌雄の成虫を同一のシャーレに移し、行動を解析する。また、配偶行動が観察された場合、配偶行動後のメスの組織学的検討を行うことにより受精様式を明らかとする。以上の実験により、これまで未解明であったカマアシムシ目の配偶行動や受精様式の解明が期待される。次年度は最終年度にあたるため、得られたデータは速やかに発表・公表する。
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