研究課題/領域番号 |
20K06788
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
三浦 収 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (60610962)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 適応放散 / 古代湖 / カワニナ類 |
研究実績の概要 |
日本で最も古い歴史をもつ琵琶湖には固有の動植物が多数生息している。これらの琵琶湖固有種の中でも特に著しい多様化を遂げているのが淡水巻貝のカワニナ類である。琵琶湖には様々な形態を持つ固有のカワニナ類が15種類も生息していることが知られている。申請者のこれまでの研究により、琵琶湖のカワニナ類は、湖が拡大した約40万年前から急速に多様化したことが明らかとなった。しかし、どのような過程を経て琵琶湖のカワニナ類が多様化したのかについては、まだ謎に包まれたままである。また、琵琶湖のカワニナ類の種の妥当性についても明確には検討されていないのが現状である。本研究では、琵琶湖のカワニナ類の種の妥当性の検討と、急速な多様化のメカニズムを解明するため、網羅的なゲノムDNA解析を行った。 琵琶湖に生息するカワニナ類の中から同所的に生息している種を複数種選び、そのゲノムDNA上の変異の入り方についての情報を収集し、対象とする形態種間に遺伝的交流があるかを検討した。その結果、対象とした多くの形態種間において生殖隔離が確立していることが明らかとなった。また、いくつかの種間においては雑種個体と思われる個体が確認された。これらのことから、琵琶湖に生息するカワニナ類の中でも本研究の調査対象とする種においては、生殖隔離が一部不完全ながらも成立していることが明らかとなった。したがって、対象とした形態種については生物学的種概念からも種として妥当であることが示された。 また、琵琶湖でどのようにして急速な多様化が生じたのかを明らかにするため、湖北に生息する2種のカワニナをターゲットにして詳しいゲノム系統解析と集団遺伝学的解析、そして生態学的解析を現在進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
琵琶湖のカワニナ類の種の妥当性を検討するために行ってきた集団遺伝学的解析については、年度内にある程度の結果を出すことができた。また、予定していたMorphometry解析についても予定通り終え、種間の形態的違いについても検討することができた。これらの解析に加えて、2年目は野外における生態調査を行った。ライントランゼクト法により対象とするカワニナ類の深度別の分布について明らかにするとともに、各深度から得られたサンプルのゲノムDNA解析の準備も進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目は、各深度から得られたサンプルについてのゲノムDNA解析をさらに進め、遺伝学的視点から対象とするカワニナ類の多様化の歴史の解明に迫ると共に、野外におけるカワニナ類の飼育実験などを通して、カワニナ類の多様化の原動力となる生態的な特徴などについて検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたゲノムDNA解析の一部の準備が年度内に間に合わなかったためにゲノムDNA解析費用分の差額が生じたため。
|