研究課題
琵琶湖には様々な形態を持つ固有のカワニナ類が、最近の報告も含めて18種類も生息していることが知られている。申請者のこれまでの研究により、琵琶湖のカワニナ類は、湖が拡大した約40万年前から急速に多様化したことが明らかとなった。しかし、どのような過程を経て琵琶湖のカワニナ類が多様化したのかについては、まだ謎に包まれたままである。また、琵琶湖のカワニナ類の種の妥当性についても明確には検討されていないのが現状である。本研究では、野外調査と分子遺伝学的アプローチを組み合わせ、琵琶湖のカワニナ類の種の妥当性の検討と、多様化のメカニズムの解明を目指した。まず、カワニナ類の種の妥当性を検討するため、琵琶湖内に同所的に生息する複数の種を用いて、集団遺伝学的手法による遺伝的交流の有無を検討した。その結果、ほとんどの種間において遺伝的交流が見られないことが明らかとなった。一方で、少数の種間においては雑種の可能性がある個体も見られた。これらの結果は、検討に用いた琵琶湖のカワニナ類には一部不完全ではあるものの生殖隔離が生じていることを示している。次に、どのようなメカニズムにより、琵琶湖のカワニナ類が多様化したのかを検討するため、湖北に生息するクロカワニナとトキタマカワニナを対象にして生態調査及び遺伝子解析を行った。その結果、これら2種は、生息環境及び餌資源に違いがあると共に、非常に近縁ではあるものの遺伝的な交流もほとんど見られないことが明らかとなった。これらの研究成果により、琵琶湖のカワニナ類の多様性と、種の多様化のメカニズムの一端を明らかにすることができた。
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